韓国大統領選

新大統領、対日問題で課題山積 韓国世論の改善がカギに

韓国の文在寅大統領(アジア太平洋通信社機構合同取材団・共同)
韓国の文在寅大統領(アジア太平洋通信社機構合同取材団・共同)

【ソウル=時吉達也】5月に発足する韓国新政権は、1965年の国交正常化以降、最悪の対日関係の改善が喫緊の課題となる。いわゆる徴用工訴訟で日本企業の韓国内資産売却が迫るなど、問題解決に残された時間は少ない。歴代政権が対日政策を進める上での壁となってきた韓国世論の改善もカギを握る。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は2017年5月の就任初日、韓国紙の東京特派員を務めた知日派の李洛淵(イ・ナギョン)氏の首相指名を発表。慰安婦問題をめぐっては15年12月の日韓合意に対し選挙戦で掲げた「再交渉」の公約を封印した。

しかし、合意に基づき日本政府が10億円を拠出して韓国で設立された「和解・癒やし財団」の解散が発表され合意が事実上破棄された18年以降、両国間の懸案が次々浮上した。「徴用工」をめぐっては、韓国最高裁で18年10月、日本企業への賠償を命じる判決が確定。日本企業の資産差し押さえ手続きが進む中、日本が19年7月、半導体材料の輸出管理厳格化を発表すると、韓国世論は「経済報復」と猛反発。日本製品の不買運動に発展した。

「加害者の日本が開き直り大声を上げる」(文氏)。世論に押される形で、韓国政府は8月、日本側に軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄決定を通告。その後、当面維持に転じたが通告は撤回されず、現在も両国の安保協力に影を落としている。

一方、昨年末には環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加盟に向け手続きに着手したが、韓国のTPP入りには日本政府が慎重だ。懸案の交渉過程で、韓国側が反発する東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出や「佐渡島の金山」(新潟)の世界文化遺産登録の問題を外交カードとして持ち出す可能性もある。

両国首脳が行き来する「シャトル外交」を進めた盧武鉉(ノ・ムヒョン)、李明博(イ・ミョンバク)両元大統領も任期序盤に関係改善を図ったが、支持率低下とともに「反日」に転じた。日韓外交筋は「韓国社会の保革対立が激しさを増す中、政府が世論の反対を抑え対日協議を進めるハードルはかつてなく高い」と言う。

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