強硬に対外批判を繰り返す一方、自国の政策は常に正当化する中国の「戦狼外交」が顕著になって久しい。外務省報道官が文字通り「戦う狼」を演じてはいるが、その〝品位〟に国際社会は驚きを隠せなかった。代表格の趙立堅報道官は、新型コロナ感染症が表面化した2年前、「ウイルスは米軍が武漢に持ち込んだ」と珍説を唱えて名をはせた。国際社会の常識とはかけはなれた戦術ゆえか、米欧では中国外務省を「対外関係破壊省」と揶揄(やゆ)する報道もある。
だが昨今のウクライナ紛争では狼も不思議と言葉を濁す。中国にとってウクライナは空母など軍事技術を提供してくれた重要な相手国だった。一方、日米欧への対抗軸としてロシアのプーチン大統領のご機嫌を損ねるわけにはいかない。国益のため〝ご都合主義〟は外交術の一つ。そうした中で、過激な発言もいとわぬ戦狼外交への驚きも薄らいできた。イソップ童話にある〝オオカミ少年〟の話を思い出す。
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