主張

ロシアの情報統制 「真実」を敵に回す暴挙だ

ロシアのプーチン政権がウクライナ侵略をめぐり、強力な情報統制に乗り出した。

民主主義の根幹を成す「報道の自由」や「知る権利」を露骨に遮断する暴挙であり、許すことはできない。直接の被害者となるのは、ウクライナ国民とともに、当のロシア国民である。

プーチン大統領はロシアの軍事行動に関する「虚偽情報」の流布や、「軍の信用失墜」を狙った活動をした者に最長で禁錮15年を科す法律に署名した。英BBC放送など欧米メディアのニュースサイトやツイッター、フェイスブックへのアクセスも遮断した。

米CNNやBBCなど欧米主要メディアはロシア国内での活動停止に追い込まれた。ロシア国民に加えて外国メディアの関係者らも摘発対象となったためだ。当局が不都合とみなせば事実を報じても禁錮刑にされる恐れがある。

これまでも国内メディアに、軍事行動については政府の公式発表のみを報じるよう強いていた。ウクライナ侵略は「特別軍事作戦」であり、「侵攻」「戦争」と呼ぶことを禁じていた。

官製ニュースに頼る多くのロシア国民は、ロシア軍による原発攻撃や住民殺傷の事実を知らない。若者を中心に一部の国民は外国メディアやSNSを通じて侵略の実態を知り、各地で戦争に反対するデモを広げてきたが、これも封じられようとしている。

プーチン政権は、ウクライナ政府が親露派支配地域で「ジェノサイド(集団殺害)」をしていると主張し、ゼレンスキー政権を「ネオナチ」と呼ぶプロパガンダを続け、憎悪を煽(あお)っている。

ロシア軍の損害はほとんど報じず、原発攻撃は「ウクライナ側の仕業」などと大統領自らや国連大使が臆面もなく主張している。これこそが虚偽情報ではないか。

プーチン氏にとって、いまや最大の敵が「真実」なのだろう。

旧ソ連解体への引き金となった1986年のグラスノスチ(情報公開)以前の姿にロシアの姿を戻そうとしているのではないか。

21世紀の現在、強権によって真実を封じ、虚偽にまみれた侵略戦争を続けても満足する結果は決して得られない。プーチン氏はそう知るべきである。

民主主義と自由を否定する暴力と破壊に対しては、徹底的に言論で戦わねばならない。

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