ウクライナ 戦禍の街で

迫る戦車、人生で一番難しい決断

夫が作ったロボットと息子。今こんなロボットがあれば…。避難するか否か難しい選択に迫られている=キエフ(ユーリアさん提供)
夫が作ったロボットと息子。今こんなロボットがあれば…。避難するか否か難しい選択に迫られている=キエフ(ユーリアさん提供)

3月7日

「息子を連れて安全な場所に行くべきだ」と、一日中言われている。

キエフの外にはロシア軍の装甲車が長い列をなし、キエフを襲撃するために力を集めている。北西ではロシア軍が住居を荒らし、食料を運ぶボランティアや避難民を殺害している。ロシア軍が制圧した地域には動物保護施設もある。とっくに食料が尽き、何百匹もの動物が餓死している。

私は子供の安全に責任がある。息子のセウェリン(8)は自分のことをまだ自分でできないから、私が面倒を見なければならない。しかし(息子と避難することは)家族を置いていくことを意味する。親は行きたがらないし、夫は行けない。

キエフは自衛の準備を進めている。インフラはすべて動く。店や薬局は開いているし、食料も買える。

シジュウカラに与えるヒマワリの種も、5キロ買うことができた。こんな大きな袋なら、暖かい季節まで持ちこたえることができそうだ。もちろん、それまで生きられる場合。

街の高級レストランはフィールドキッチンとして再利用され、軍隊や病院、民間人に提供するための料理をつくっている。高級服のデザイナーはキャットウオーク(ランウェイ)用のドレスではなく、軍用のボディアーマーや防寒下着を縫っている。

きょうはミコライフの動物園が砲撃されたが、幸いにも砲弾は爆発せず、ホッキョクグマの囲い近くの地面に命中した。クマは生きているそうだ。

子供を連れてキエフを離れるかどうか、一晩で決めなければならない。今までで一番難しい決断。

戦前、夫は「ウォーハンマー40000」というゲームに出てくる戦闘ロボットの木型を作った。そんなロボットがあれば、今なら非常に役に立てる。

キエフ郊外から ユーリア・クリメンコ

=随時掲載(内容を一部加筆・修正しています)

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