発達障害のある息子、リュウ太は小さい頃から車が大好き。普通科の高校ではなく、自動車整備士を目指すための専修学校に行きたいと言い出したとき、親としては、将来の選択肢は広い方がいいのではと反対する思いもありました。でも息子は「普通科の高校はつまらなさそう。1週間で辞めたくなると思う」とかたくなでした。専修学校の高等課程では、同じ趣味の仲間とマニアックな会話を楽しみ、車やバイクのレース部にも所属。小中学生のときより明るくなって、毎日楽しそうにキラキラしていました。
でもそこは息子。親の憂いはなくなりません。高等課程の後、2年間の専門課程では、整備士の試験を受けるための授業と就職活動が同時期にスタート。遊ぶ暇のないほど忙しくなるはずなのですが、息子は変わらずマイペース。周りが就活を進める中、アルバイトの後に仲間とバイクをいじりながら語り合い、朝方に帰宅しては授業を欠席。卒業まで5カ月を残して、1日でも休めば留年決定!という事態になりました。
卒業できなければ整備士試験の受験資格も得られません。追い込まれたそのとき、整備助手のアルバイトをしていた自動車販売会社の現場責任者から思わぬ言葉が。「うちの会社に就職するなら、本社に推薦するよ」。息子は急に就活に前向きになり、学校にもまじめに通いだしました。
息子はそれまで、「社会人」にネガティブなイメージを持っていたそうです。ネット上で見かけるのは、パワハラによる鬱病や過労死のニュースばかり。アルバイトは楽しいけれど、社会人になるのは怖い。一方で、同級生より就活に出遅れていることを実は焦っていたし、自分に自信が持てず、就活しても採用されないのではないかという不安もあったと。でも、働き慣れた場所で就職できるよう推薦してもらえるならと、自分にも可能性が見えたことで頑張れたようです。