ロシアのウクライナ侵攻で世界的に石油・天然ガス価格が急騰している事態に対応し、国際エネルギー機関(IEA)が備蓄石油6000万バレルの協調放出を決めた。日本はこのうち750万バレルを放出する。
国際社会がロシアへの経済制裁を発動したことで、ロシアからの資源輸入に懸念が強まり、価格高騰を招いている。協調放出は昨年11月にも一部実施されたが、放出量が限定的だったこともあり、目に見える効果をあげられなかった。
このため、日米欧は石油価格の動向に大きな影響力を持つ石油輸出国機構(OPEC)などとも連携し、各国で危機感を共有する必要がある。
IEAは臨時閣僚会議で協調放出を進めることで合意した。IEAの要請による協調放出は、リビア情勢の悪化で世界的に原油の供給懸念が強まった2011年以来だ。国際社会が価格抑制の姿勢を示すことが重要である。
放出する6000万バレルのうち、米国が半分を受け持ち、日本は民間が備蓄する石油を市場に提供する。各国は効果的な放出方法などについて協議し、必要に応じて追加放出も検討すべきだ。
ウクライナに対する武力侵攻を受け、米国の原油先物相場は一時、1バレル=116ドル台の高値を記録した。これに伴って液化天然ガス(LNG)やガソリンも大きく上昇している。
ただ、協調放出できる石油は限られており、現在の価格高騰をどれだけ抑えられるかは不透明だ。価格抑制を目指すには、OPECの協力が不可欠である。OPEC側は4月も現行の小幅増産を継続する方針だが、さらなる増産を働きかける必要がある。
一方、日本はガソリンの値上がりを抑えるため、石油元売り会社に対する補助金の上限を、1リットルあたり最大25円に増額することを決めた。漁業者やタクシー事業者などへの支援も実施する。
ガソリン補助金の期限は3月末までだが、市場動向を見て4月以降も補助を継続する。中小・零細企業の打撃を軽減するため、きめ細かな支援が欠かせない。
エネルギー価格の高騰で電気料金なども値上がりが続いている。政府には目先の価格対策だけでなく、資源価格が高騰しても、安価で安定供給を継続できる抜本的なエネルギー政策を求めたい。