干支アワードで圧勝した和歌山城の癒やしトラ

グランプリを獲得した和歌山城の「伏虎像」=和歌山市
グランプリを獲得した和歌山城の「伏虎像」=和歌山市

江戸幕府8代将軍、徳川吉宗も城主を務めた和歌山城(和歌山市、国史跡)。天守閣を見上げる本丸御殿跡近くの城のシンボル的な像「伏虎(ふっこ)像」が、今年の干支(えと)「寅(とら)」にちなんだ美術・工芸作品をテーマにしたインターネットの人気投票でグランプリを獲得した。市の担当者は「これまで認知度は低かったが、これを機に観光客を呼び寄せる〝招きトラ〟になってほしい」と期待を寄せる。

この人気投票は、総合ディスプレー業の「丹青社」(東京)が運営している日本最大級の美術館・博物館の情報サイトで、平成27年から博物館や美術館の所蔵品などを対象に、その年の干支にちなんで実施している「ミュージアム干支コレクションアワード」。

今年の干支の寅にちなんで全国の美術館や博物館などに応募を呼び掛けたところ、和歌山市運営の「わかやま歴史館」が応募した伏虎像をはじめ、絵画や工芸品など計93点が寄せられた。

昨年12月14日~今年1月27日にインターネットで人気投票を実施。伏虎像は最多の3424票を獲得し、2位に倍以上の差をつけてグランプリに輝いた。

初代は戦時中に撤去

伏虎像はコンクリート製で、全長3・5メートル、幅2・9メートル、高さ1・2メートル。

市によると、戦前は同じ場所に別のトラの銅像があったが、戦時中の昭和17年に金属供出のため撤去された。

天守閣は戦火で焼失。その再建の記念として戦後の34年、和歌山県かつらぎ町出身の工芸作家、故角田蘇風(つのだ・そふう、1898~1977)から〝2代目〟として寄贈を受けたという。

天守閣が建つ「虎伏(とらふす)山」は遠方から眺めると、うつぶせのトラのように見える。これが山の名称の由来とされ、「コンクリート像の造形のモチーフにもなり、伏虎像と名づけられたようです」と市の担当者は説明する。

虎伏山に築かれた和歌山城=和歌山市
虎伏山に築かれた和歌山城=和歌山市

市民が愛する癒やしの表情

今回の人気投票でエントリーされた中には、MOA美術館(静岡県)の俵屋宗達作「虎図」や、兵庫県立考古博物館加西分館(同県加西市)の白虎(びゃっこ)などを表した中国・後漢時代の画像鏡、泉屋博古館(京都市)の中国の古代青銅器「虎卣(こゆう)」など数々の貴重な作品も含まれていた。

並み居る強敵を退けて伏虎像がグランプリに選ばれた理由について、丹青社の担当者は「愛らしい伏虎像に日頃から親しんだ和歌山市民の熱心な票が、グランプリに結び付いたのでは」と推測する。

サクラの季節は観光客でにぎわう和歌山城の天守閣=和歌山市
サクラの季節は観光客でにぎわう和歌山城の天守閣=和歌山市

実際に、投票した人たちからは「強い和歌山愛から1票投じます」「毎日のジョギングでお会いします」「和歌山城の守り主です」などのコメントも寄せられた。

制作した角田蘇風は伏虎像のようなコンクリート製の像を得意としたとされ、蘇風の孫で川崎市在住の会社員、角田多平さん(63)は「人を楽しませるのが大好きだった祖父が一番、グランプリを喜んでいると思います。伏虎像は、のんびりとくつろいだ表情が特徴で、不思議な癒やし効果もあります」と話す。

市の担当者は「インスタ映えするかは分かりませんが、紀州を訪れる観光客には、ぜひ伏虎像にも会いに来てほしい」と呼びかけている。

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