人とかかわりを持たず孤独に生きてきた四宮(しのみや)勇気がアルバイトを終えて自宅に帰ると、室内で見知らぬ男が腹を刺されて座り込んでいた-。そんな衝撃的な場面から始まるドラマ「ヒル Season1」(WOWOW)。赤楚衛二は、その後の展開がさらに衝撃的だ。病院に運ばれた男は、自分の名前を「四宮勇気」と名乗り、警察官に向かって勇気を指さし、「この人に刺された」と証言する。とっさに逃げ出し、名前を奪われた上に逃亡犯となった勇気は、居住者が留守の間に無断で部屋に上がり込んで生活する不法滞在者、通称〝ヒル〟の存在を知ることになる。刺された男は、勇気の部屋で生活していたヒルだったのだ。
原作漫画の作者、今井大輔が作り出したヒルという設定を知ったときは、「めちゃくちゃぞっとした」と話す。「だって、自分が外出中に部屋に誰かがいてもおかしくない。怖いですよ」。水道やガスはもちろん、シャンプーなどの生活用品も勝手に使うヒルという設定に、私生活でも思わず「減っていることが分かるよう、シャンプーのボトルを中身が見える透明に変えた」ほどだ。
ヒルの一人であるゾーカ(吉川愛)の助けを借り、ヒルとして生きることになった勇気。「普通の生活をしていた男が突然、法も秩序も存在しない動物的な世界に飛び込む。法や秩序というのは、まず人間として認められていることが前提で守られるものなんだと思いました」
自身の生い立ちから人とのかかわりを断ってきた勇気だが、父親を殺されたゾーカの復讐(ふくしゅう)を手伝ううち、彼女に特別な思いを抱き、人は人とつながっていないと生きていけないことを知る。激しいアクションシーンも見ものだが、「残念ながら、ぼこぼこにされる方なんです。これまでアクションがある作品ではずっと負ける方だったので、1回くらい勝ってみたいんですけど」と苦笑いする。
物語は、〝ヒル狩りのカラ〟の異名を持つ伝説のヒル、カラ(坂口健太郎)を主人公にしたSeason2に引き継がれる。社会からはみ出した人間たちの復讐劇は、どんなラストを迎えるのか。中でも勇気の選んだ道は、救いを指し示しているようにみえる。
ハードな世界を生き切り、「日常を当たり前に過ごすことがどれだけ幸せかが分かる」とかみしめる。最後に視聴者に「家の鍵は必ずかけて」と呼び掛けることも忘れなかった。(道丸摩耶)
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あかそ・えいじ 平成6年生まれ、愛知県出身。モデルとして活動を始め、29年の「仮面ライダービルド」(テレビ朝日)に万丈龍我/仮面ライダークローズ役で出演。令和2年、「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(テレビ東京)で連続ドラマ単独初主演。同作の映画も4月に公開される。最近の主な出演ドラマに、「彼女はキレイだった」(フジテレビ系)、「SUPER RICH」(同)など。
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「ヒル Season1」はWOWOW、金曜午後11時。