ロシア軍、ウクライナ南部の要衝オデッサ攻略を視野か 首都包囲も着々

5日、空爆を受けたウクライナの首都キエフ南西の町。道路に穴が開き、民家も破壊された (ロイター)
5日、空爆を受けたウクライナの首都キエフ南西の町。道路に穴が開き、民家も破壊された (ロイター)

【ワシントン=渡辺浩生】ウクライナ侵攻から10日を経過したロシア軍について米国防総省は、首都キエフ北方に待機する部隊がウクライナ軍の反撃に直面しつつ包囲作戦に態勢を整える一方、南部では最大の要衝オデッサ攻略も視野に黒海沿いで攻勢を強めていると分析している。ウクライナ側が要請する飛行禁止区域設定を否定する欧米諸国は、現地への武器供与を急ピッチで進めるが、無差別砲撃による民間人の犠牲を食い止める手段を欠いているのが実情だ。

同省高官による戦況説明を総合すると、露軍は国境沿いに集結した兵力の9割超を投入。首都を目指す部隊はキエフ北方約25キロに待機。長蛇の戦闘・輸送車両の列は、無人機を含めた攻撃を受け、橋も爆破されるなど前進を阻まれている。

高官は露軍側に「リスク回避の傾向がある」と指摘。前進を控えながら、食料・燃料不足の解消に務めつつ首都包囲の態勢を着々と整えているとみられる。

一方でミサイル攻撃は侵攻開始から500発を超えウクライナ国内からの発射は約5割に達した。自走式発射台を使って主要都市の周囲から無差別砲撃を強める現状を裏付けている。

クラスター爆弾が使用されたとの報告について同省は確認を避けるが、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は4日、使用を認めた。

南部戦線では2014年にロシアに併合されたクリミア半島の駐留部隊の支援を受け「北部よりペースは速い」(高官)。南部の主要都市へルソンを陥落させた露軍の目標がそのまま北西を進み、最大の港湾都市オデッサ攻略にある可能性を示す。東部マリウポリも黒海からの上陸部隊が包囲を強め、黒海沿岸を制圧して同国を海上から遮断する狙いも浮き彫りとなってきた。

制空権はウクライナ空軍が戦闘機や地対空ミサイルを駆使し死守を続けるが、露軍の支配空域は広がりつつある。ゼレンスキー政権が求める飛行禁止区域設定を、米国とNATOは紛争当事者となるのを回避するため拒否している。

バイデン政権はウクライナ軍の自衛能力を持続させるために武器供与のスピードアップと軍事情報の共有を2本柱に据える。

別の高官によると、NATO加盟国など計14カ国が武器供与に着手し、米国が先月末承認した3億5千万ドルの追加支援のうち2億4千万ドル分が現地に到着したという。5日付米紙ワシントン・ポストによると、ジャベリン対戦車ミサイルに加え、スティンガー対空ミサイルが初めて届けられた。輸送は西側で接するポーランドからとみられる。

潤沢な支援を受けるウクライナ軍だが、露軍の進攻を遅らせても失地を回復し民間人の犠牲を食い止めるには及ばない。「最悪の事態がまだ先にある」(マクロン仏大統領)のは西側指導者も認めている。

「問題は、悲劇的な破壊をいつまで続けるのか、すべてをプーチン氏ひとりが握っていることにある」。イラク・アフガニスタンに従軍した元米軍幹部は本紙にいらだちを漏らした。

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