直木賞作家である著者の介護と乳がん闘病エッセーが文庫化された。
認知症の母親の介護を続けてきた著者は、母親を施設に入れて一息ついたとたん、自分の乳がんが見つかった。「一生に一度のセレブ入院も悪くない」と全個室の病院を選び、手術のために入院している間も仕事をこなす。新刊の著者校正を行い、締め切りをにらみながら短編を執筆し―。
がんを受け入れ、検査や手術、通院の日々をユーモアを交えながら細かくつづる。明るささえ感じる闘病記に比べ、介護体験記は厳しい現実を突きつける。老後の備えになる一冊だ。(篠田節子著/集英社文庫・616円)