川村妙慶の人生相談

苦手な上司とまた働くことに

イラスト・千葉真
イラスト・千葉真

相談

60代パート勤務で介護職の女性。最近職場に、昔上司だった女性が出戻ってきました。彼女は正職員で、以前、上司だったときは弱い立場のパート職員にパワハラまがいの言葉や態度で接し、私は胃に穴が開きそうなほど、つらい思いをしました。施設長につらさを直訴したこともありました。

彼女が別の施設に異動して胸をなでおろしていたのに、また一緒に働くはめに。以前のように直接パワハラをされることはありませんが、相変わらず新参の人にはきつい態度をとっており、顔を合わせるだけで苦しくなります。

かといって私もいい年なので転職は難しいです。年金も少ないし、まだまだ元気です。これからも今の職場で働いていくために、心の持ちようをご教示ください。

回答

ようこそおたよりくださいました。どれほどご心痛な日々でしょう。人間の性格はそう簡単に変わりません。上手に意識を切り替え、付き合っていくしかないですね。

人間は「自分を否定する人に魅(ひ)かれる」ということをご存じですか? 過去に私がそうでした。アナウンサーだったころ、いつも嫌みしか言わない先輩がいました。毎日顔を合わせるのが苦痛。なのに、その先輩に愛想よくしたり、時にはお土産を渡したりしました。でも変わらず嫌みを言われます。私は悔し涙を流したものです。

しかし、僧侶になって気付きました。当時は「相手が嫌いという感情を自分で抑えつけていただけ」だったのだと。お土産を渡すこと、先輩の機嫌を取ってこれ以上嫌みを言わせないようにしようと、過剰に防衛していただけだったのです。

中国の高僧、曇鸞(どんらん)大師のお言葉に「蚕繭(さんけん)の自縛(じばく)するがごとし」とあります。蚕(かいこ)が繭(まゆ)を作るように、自分で吐いた糸で自分自身を縛りつけて苦しんでいる、という鋭い指摘です。

あなたがつらいのは、「元上司との過去の関係を見ているから」ではないでしょうか。トラウマである一方で、あなたはその方を反面教師とし、多くのことを学ばれたはずです。

元上司が虚勢を張るのは自信がないからでしょう。自信があれば、優しい言葉を他人にかけられるはず。きっと自分に余裕がないのでしょう。そんな自信のない人の態度を、真に受けて嫌な思いになることはありません。

あなたが向き合うべきは、入居する方々と同僚です。あなたの優しさで温かい職場にしてほしいのです。過剰に反応して自分を苦しめず、あなたが仕事に集中できるようにと、念じています。

回答者

川村妙慶 僧侶兼アナウンサー。昭和39年生まれ。ラジオのパーソナリティーとして活動するほか、ブログで法話を日替わり更新中。著書に、「泥の中から咲く 身と心をほぐす18の知恵」(NHK出版)や、「人生後半こう生きなはれ」(講談社+α新書)などがある。

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