環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の加入申請を昨年秋に行った中国が、早期の交渉入りへ動いている。
2月上旬には、TPPで定められたルールの一部を国内の自由貿易試験区で試験導入する方針を中国税関総署が表明したと報じられた。高い水準のルールを順守できる国内体制があるとアピールする狙いとみられるが、具体的な試行地や対象ルールなど詳細は明らかになっていない。17日には、商務省の高峰(こうほう)報道官が「TPPの加入手続きに照らし、メンバー各国と接触、協議を進めている」と表明。李克強首相は5日、シンガポールのハリマ大統領と会談し、TPPの加入実現へ「積極的に意思疎通をしたい」と協力を求めた。シンガポールは今年のTPP議長国だ。
中国は、TPP加入を通じてアジア太平洋地域で自国の影響が及ぶ貿易・経済圏を広げることを狙う。対立の長期化が見込まれる米国が、世界で対中包囲網を広げようとしていることが背中を押している。日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国など15カ国が参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が今年1月に発効したほか、中国は昨年11月にデジタル貿易に関する新枠組み「デジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)」にも加盟申請した。チリ、ニュージーランド、シンガポールが締結した協定で、国境を越えたモノやビジネスの取引における人工知能(AI)やビッグデータのやり取りなどに関するルール作りを目指している。自国に有利なルール作りをデジタル分野でも進める考えとみられる。