93歳の父は、昨年は入退院を繰り返しました。近くに住む私の妹の助けを借りながら、一人暮らしで何でもできていたのに、急に衰えました。
そしてわたしは、2年も会えずにいました。
父は、奄美大島の出身です。子供の頃、戦争中に鹿児島に疎開してきましたが、蛇皮(じゃび)線が上手でした。そして寄り合いでは花形でした。
ある日、少しでも元気になってくれればと思い、島唄のヨイスラ節を聞きたいと電話で言ったら、快く歌ってくれました。
歌った後に父が、歌詞の説明をしてくれました。
「会いたいと思っていれば、必ずいつか会えますよ。それまでゆったりとした気持ちで待っていましょう」
即興で作詞したのだそうです。すごい才能だと思いましたが、島唄では普通のことだそうです。
そして、ゆったりとした気持ちでといわれて、心が軽くなった気がしました。
昨年11月に、コロナの間隙を縫うように鹿児島に帰り、PCR検査もして、父に会うことができました。
今は高齢者施設に入っていますが、妹の家にいるときも今も、看護師さんや介護士さんの行き届いた対応に頭が下がります。
たいへんなときですが、「コロナが収束するまで、ゆったりとした気持ちで待っていましょう」
山本富美代(67) 横浜市鶴見区