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新書『伊賀の人・松尾芭蕉』

江戸時代に下級武士の家に生まれた芭蕉が作句で頭角を現し「俳聖」と呼ばれるようになるまでを描いたエッセー。人間味あふれる描写により、芭蕉を身近に感じる。その好例が、本書に収録された句「何に此(この)師走の市にゆくからす」(人でごった返す歳末の市へ用もないのにどうして烏(からす)が向かってゆくのだろう)。世俗の喧噪(けんそう)に心ひかれる自分を戒める様子が伝わる。

芭蕉が煩悩と闘い、自己陶冶(とうや)していく過程は興味深い。生涯の大半を旅に費やした俳聖の歩みを疑似体験することもでき、コロナ禍の閉塞(へいそく)感を打破するような気分が味わえる。(北村純一著/文春新書・935円)

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