主張

原発被災者訴訟 行政の責任も明確に示せ

東京電力福島第1原発事故で避難した住民らが東電と国に損害賠償を求めた3つの集団訴訟をめぐり、最高裁第2小法廷が東電側の上告を退ける決定をした。

原発事故をめぐっては、国と東電を相手取り、各地の避難住民らが30以上の集団訴訟を起こしている。

3件の高裁判決のうち、東電に総額で約14億円の賠償を命じた部分が初めて確定した。

一方で、国の賠償責任については、4月に最高裁が上告審弁論を開くことを決めた。今夏にも統一判断が示される見通しだ。

今後も同様の訴訟が続く中で司法判断が揺れていては混乱を招く。とりわけ、原発行政と司法の関わりにも大きな影響を与えるだけに、最高裁には冷静な判断を求めたい。

仮に、国が原発事故を防ぐ規制権限の行使を怠ったと判断された場合、東電とともに賠償金を支払うことになる。

ただ、巨大津波を予測できたかに加え、当時の規制基準で事故は回避可能だったかの争点に関して高裁判決は分かれている。2つの高裁は国が責任を負うとし、もう1つは国の責任を否定した。明確な判断が求められる所以(ゆえん)だ。

3つの訴訟は福島、前橋、千葉の各地裁で提起され、原告数は約3600人にのぼる。いずれの高裁判決も避難に伴う精神的な苦痛に加え、生活基盤や地域コミュニティーを喪失した損害を認め、国が決めた賠償指針を超える慰謝料の支払いを東電に命じている。

今回の最高裁決定を受け、東電は「確定した高裁判決に従い、原告の皆様に対応していく」との談話を発表した。東電には今後も被災者だけでなく、福島の復興にも真摯(しんし)に向き合ってもらいたい。

福島原発事故に関する訴訟では、東電の旧経営陣3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴された。1審はいずれも無罪とし、東京高裁で控訴審が開かれている。

原発政策は、国がその方針や規則を定め、電力会社が実際に運営する「国策民営」で進められてきた。東電の賠償責任は当然だが、事故の責任を東電だけに押しつけても真の解決にはならない。

事故を受けて原発の新規制基準が導入され、その安全性は大きく向上した。原発事故の国の責任を明確化することで、原発活用に関する国の関与も進めたい。

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