ロシア、「虚偽情報」流布に最高で禁錮15年 米欧メディア、相次ぎ露で活動停止

【ワシントン=大内清、ヘルシンキ=板東和正】ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領は4日、ロシアの軍事行動に関する「虚偽情報」を流布した者に最長で禁錮15年を科す法律に署名し、発効させた。事態を受け、米欧の複数の主要メディアは同日、記者の安全を確保するためロシアでの活動を一時停止すると発表した。プーチン政権の強権支配の下で報道の自由が脅かされる中、他国のメディアも追随を強いられる可能性がある。

法律は、「虚偽情報」を故意に広めた場合、最高で150万ルーブル(約140万円)の罰金または最長で禁錮3年を科すとしている。また、「重大な結果」を引き起こす虚偽情報と見なされれば禁錮10~15年が科される場合もある。

また、露政府は4日、フェイスブックへのアクセス遮断を決めたほか、ツイッターも制限。英BBC放送や米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)、ドイツ国際公共放送ドイチェ・ウェレのサイトも遮断された。

これに対し、米CNNテレビや米ブルームバーグ通信、BBCなどは4日、ロシアでの活動停止を表明。CNNは声明で「ロシア国内での放送を停止し、状況を見定めて今後の活動のあり方を検討する」と述べた。BBCのデイビー会長は、問題の法律は「独立した報道のプロセスを犯罪とみなしているようだ」と非難し、「取材活動を一時停止する以外の選択肢はなかった」と説明した。

カナダ放送協会(CBC)、ドイツ公共放送連盟(ARD)、ドイツ第2テレビ(ZDF)も5日までにロシアでの活動の一時停止を決定。米ABCテレビはロシアからの中継を一時中止すると発表した。

BBCは「正確で独立した情報へのアクセスは基本的権利で、ロシア国民がそれを否定されるべきではない」と批判。BBCは今後もロシア語版のサービスを継続し、ロシア国外から運営するとしている。

一方、欧州連合(EU)は2日、今回の侵攻に関して偽情報を広めているとして、露国営メディアの「RT(ロシア・トゥデイ)」や「スプートニク」によるEU圏内での放送や配信を禁止すると発表した。

EUのボレル外交安全保障上級代表は声明で「露政府による組織的な情報操作や偽情報がウクライナ攻撃の道具として使われている」と非難。偽情報は「EUの秩序や安全に対する重大かつ直接的な脅威でもある」と強調した。

会員限定記事会員サービス詳細