国連安保理 ロシア軍の原発攻撃に非難相次ぐ 露は「西側の嘘」主張

損傷したウクライナ南部のザポロジエ原発の建物(4日、原子力企業エネルゴアトム提供、ロイター)
損傷したウクライナ南部のザポロジエ原発の建物(4日、原子力企業エネルゴアトム提供、ロイター)

【ニューヨーク=平田雄介】国連安全保障理事会は4日、ウクライナに侵攻したロシア軍が南部ザポロジエ原発を攻撃したことに関し緊急公開会合を開いた。会合では、原発や周辺施設への軍事攻撃は「無謀で危険だ」と非難や懸念の声が相次いだ。また、15理事国のうち9カ国が「国際法違反違反だ」として国際法の遵守を求めた。一方、ロシア代表は「露軍が原発を攻撃したというのは西側の嘘だ」と主張した。

会合では国連のディカルロ政治局長が、民間人に重大な損失がをもたらす恐れがある場合は原発および周辺の軍事目標を攻撃の対象としてはならないと定めたジュネーブ条約第1追加議定書を紹介し、露軍の行動を「容認できない。極めて無責任だ」と非難した。

また、会合を要請した英国に加え、米国やアルバニア、フランス、アイルランド、ノルウェー、ブラジル、ケニア、メキシコの代表が国際法を尊重する必要性を強調。中国とアラブ首長国連邦(UAE)、ガーナの代表は事態への懸念を表明した。インド代表は「注意深く見守っている」と述べるにとどめた。ガボン代表は発言しなかった。

英代表は「稼働中の原発を国家が攻撃したのは初めてだ。二度と起きてはならない」と訴えた。仏代表は「欧州最大の原発で火災が起きた」として攻撃を非難。メキシコ代表は「原子炉に影響がなく、周辺の放射線量が増加していないとしても事態の重大性は軽減されない」と強調した。

米代表は、露軍が制圧した2原発でウクライナの技術者が「極度の緊張」の中で作業していることへの重大な懸念を示した。北部チェルノブイリ原発では「先週から勤務交代が行われていない」とし、露軍は「非常に無責任だ。両原発の安全な操業の継続に重大な懸念を抱かせる」と述べた。

アルバニア代表は、ザポロジエ原発を制圧したことで「ロシアはウクライナの電力供給の5分の1を握った。ウクライナの市民生活と経済への甚大な影響が懸念される」と指摘した。

ノルウェー代表は原発周辺施設への砲撃は「欧州の他の地域も含めた命をあからさまに無視している」と強調。UAE代表も「重大事案となった場合の封じ込めは難しく、人間の健康と環境の両面でのコストは計り知れない」と訴えた。

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