私の本棚

すばらしき「褒める人生」 作家・実業家 永松茂久さん カーネギー「人を動かす」

たこ焼きの行商から飲食店経営を始め、2年後に事業を拡大し、ダイニングレストランを展開しました。スタッフが増え、20人ほどになりましたが、年齢もモチベーションもバラバラ。うまくコミュニケーションが取れない状態でした。そんなとき、書店でふと、手に取ったのがこの本です。

人間関係の原則を説いた名著ですが、特に心に残ったのが「人を動かす三原則」。盗人にも五分の理を認める、重要感を持たせる、人の立場に身を置く-ということが実例を交えて紹介されていました。

とりわけ自分の中で響いたのが、「重要感を持たせる」でした。誰もが自分を重要人物だと扱ってほしいと願っているというのです。人を動かす秘訣(ひけつ)は、自ら動きたくなる気持ちを起こさせること。そのためには、「重要人物たらんとする欲求」を満たすことが示されていました。

作家・実業家の永松茂久さん
作家・実業家の永松茂久さん

ところが、当時の自分はスタッフに対し「働きに来ているんだからやる気を出せよ」などと、かなり厳しく言ってしまっていたんです。

「人に好かれる六原則」では、褒めることの効果について触れていました。人を働かせるには非難せず、激励が必要だということです。厳しいことばかり言うのではなく、人のいいところを見つけて褒めるということを徹底的にやってみよう、「褒める人生」を送ろうと決めました。

最初はぎこちなかったですし、スタッフからもけげんな顔をされました。ただ、褒めると決めてしまえば、そのための材料を積極的に探すようになった。褒めているうちに相手も頑張るし、自分も気分が良くなって、さらに褒めたくなるという良いサイクルに入りました。

初版は1936年ですが、長く読み継がれているのは、人間の感情や性質は100年前も変わっていないからでしょう。自分にとって宝物のような本です。最初に手に取った単行本は繰り返し読んだせいでボロボロになり、買いなおしました。今も半年に1回は読み返している、原点とも言える本です。

ながまつ・しげひさ 昭和49年、大分県生まれ。明治学院大卒業後、平成13年、たこ焼き屋の行商を始め、15年にダイニングレストランを経営。作家としても活動し、著書はベストセラーとなった『人は話し方が9割』など多数。

会員限定記事会員サービス詳細