米でロシア産原油の輸入禁止求める超党派法案 政権はインフレ懸念か

バイデン米大統領(AP)
バイデン米大統領(AP)

【ワシントン=大内清】ロシアによるウクライナ侵攻を受け、米国で露産原油の輸入を停止するべきだとの声が強まっている。上院では3日、超党派による輸入禁止法案が提出された。ただ、ロシアからの原油禁輸はエネルギー価格を押し上げるほか、需要を補うために環境への負荷が大きいシェールオイル・ガスや石炭の増産圧力につながるため、バイデン政権は態度を明確にできずにいる。

米政府統計によると、米国が昨年輸入した原油・石油製品約30億バレルのうち、ロシア産は約7%。法案はロシアからの原油や石油製品、液化天然ガス(LNG)、石炭の新規輸入を禁じるもので、民主、共和両党の上院議員18人が共同提出した。

共和党重鎮のグラム上院議員は「他国にも同様の措置をとるよう求めるべきだ」と主張。民主党のペロシ下院議長も3日、法案に賛意を示した。

一方、バイデン大統領は、法案が上下両院を通過した場合、署名して法案を成立させるかどうかを明言していない。サキ大統領報道官は4日、「世界の石油市場の安定を最優先させ、幅広い選択肢を検討している」と述べるにとどめた。

米国では現在、新型コロナウイルス禍を受けたサプライチェーン(供給網)の混乱や世界的な原油価格の上昇などを受けてインフレが急速に進行し、バイデン氏の支持率を押し下げている。11月の中間選挙をにらんで求心力を回復したいバイデン氏としては、インフレの加速要因となりかねない原油禁輸には慎重にならざるを得ない。

また、バイデン政権には露産原油の禁輸を機に、重点課題に掲げる環境・気候変動対策が後退することへの懸念もあるとみられる。エネルギー価格が上昇して国民の不満が高まれば、シェールオイル・ガスや石炭の増産に向けて環境規制の緩和を求める声が強まるのは避けられないためだ。

法案提出をめぐっては、地元の東部ウェストバージニア州の石炭産業の保護に向け、民主党左派が唱える気候変動対策に批判的な立場を取る同党中道派のマンチン上院議員が主導的な役割を果たしている。

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