ウクライナ 戦禍の街で

砲撃の街、そこに重なる友人の顔

爆音で目が覚め、寒い地下シェルターへ。眠りたがる息子を抱き抱える=ウクライナ・キエフ(ユーリアさん提供)
爆音で目が覚め、寒い地下シェルターへ。眠りたがる息子を抱き抱える=ウクライナ・キエフ(ユーリアさん提供)

3月4日

今朝は早くから爆音で目が覚め、地下のシェルターに駆け込んだ。息子のセウェリン(8)は「もう少し眠りたい」と、私の腕の中で眠った。

昨夜、髪を洗ったが、近所の人の迷惑にならないようドライヤーの音を立てないようにした。だから、ぬれた髪のままベッドに入った。寒い地下シェルターに駆け込むので、頭にタオルを巻いた。ばかみたいだけど、仕方がない。

ニュースを調べると、ロシア軍が南部のザポロジエ原発を砲撃していた。これは非常にまずい。最近の原発施設には爆弾対策が施されているので、すぐに大惨事が起こるとは思わないが、原発施設を占拠し、そこで働く人々を人質に取るというのは非常に危険だ。

原発事故はウクライナだけでなく、ロシアを含めて周辺国にとっても危険。プーチンにとって、人々(ウクライナ人とロシア人の両方)の命を危険にさらすことは重要な問題ではないことを、再び証明した。

念のため、息子にガイガーカウンター(放射線量測定器)の使い方を教えてあげた。もちろん、核戦争になったら、ガイガーカウンターは何の役にも立たないが、使い方は知っておいたほうがいいだろう。

ガイガーカウンターを使う息子。核戦争になれば役に立たないが、念のため教えた=ウクライナ・キエフ(ユーリアさん提供)
ガイガーカウンターを使う息子。核戦争になれば役に立たないが、念のため教えた=ウクライナ・キエフ(ユーリアさん提供)

今日は何人かの友人と連絡がとれなかった。南部ケルソネソスの友達が大丈夫か分からない。東部ハリコフにも友人が多いが、爆撃で大きな打撃を受け、多くのアパートや学校、大学、寮などが破壊された。

友達がみんな生きていることを祈っている。私の友人の母親はハリコフを離れようとしたが、砲撃の下を通り抜けることはできなかった。胸が痛む。

キエフの北の町で、現在は爆撃でほぼ壊滅状態のイルペンの友人たちは、なんとか逃げ延びることができた。

チェルニーヒウ、シュミー、マリウポリは、外国人にとっては単なる町の名前に過ぎないだろう。だが私にとっては、もう二度と会えないかもしれない、そこに住む友人たちの顔と重なる。

避難民の多くはペットを連れて行くことができなかった。残った人はそのペットに餌をやる。街を爆撃から守ることはできないが、ネコや犬の1匹や2匹は助けられるかもしれない。

母(66)は庭に出たいと言っている。春が始まり、花を植える季節になったから。だめだよ、ママ。危ないよ。今年は花が勝手に育ってくれるよ。

キエフ郊外より、ユーリア・クリメンコ(34)=IT会社勤務。夫と息子、両親と暮らす。大学で日本語を専攻、留学経験もある。

随時掲載(内容を一部加筆・修正しています)

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