騙(だま)し合い 六
房栄(ふさひで)は大内家と言い直した。陶(すえ)の郎党で反乱には賛同であったが、義隆弑逆(よしたかしいぎゃく)には強く反対、という隆兼(たかかね)と同じ立場であった老軍師は、
「長きにわたり争ってきた宿敵同士の両家が手をむすべば山陰山陽の地に起こる波の大きさは計り知れぬ」
海を眺めつつ、
「その大波、毛利を揺さぶる。安芸(あき)を我が方、備後(びんご)を尼子(あまご)と、取り決めれば、出雲は我らの誘いに乗るのでは? 仮に尼子が兵を出さずとも一時でも手をくめれば、雲州(うんしゅう)への備えに置いた兵を――安芸に雪崩(なだ)れ込ませ得る」