ロシアによるウクライナ侵攻で、同国のクレバ外相は4日、ロシア軍がウクライナ南部ザポロジエ原発に攻撃を加えて火災が発生していると報告し、「爆発すればチェルノブイリ原発事故の10倍の被害が出る」と警告した。一方、両国の代表団は3日、ベラルーシ西部ブレスト州で2回目の停戦交渉を実施。双方は戦闘地域から民間人を避難させる「人道的回廊」を設置することで一致したが、停戦など主要な問題で合意には至らなかった。
首都キエフをめぐる攻防が続いているが、南部ヘルソンが陥落し、東部マリウポリも包囲されるなど、ウクライナは厳しい状況に置かれつつある。
ウクライナのメディアによると、同原発にロシア軍が4日未明(日本時間同日朝)に侵入し、攻撃で原発施設に火災が発生。核燃料は原子炉内にあるという。消火活動が開始された。ロイターによると、露国営ロシア通信社(RIAノーボスチ)は現地の原発関係者の話として、放射線量について変化はみられていないと伝えた。
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一方、停戦交渉は約2時間半行われた。ウクライナは停戦と休戦、人道的回廊の設置を提案。ロシアはプーチン大統領が主張するウクライナの「非軍事化」や南部クリミア半島へのロシアの主権の承認などを求めたとみられる。両国メディアによると、双方は人道的回廊の設置や来週にも再交渉を行う方針で一致した。
ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は協議後、「ウクライナに必要な結果は得られなかった」と表明。メジンスキー露大統領補佐官は「将来的な紛争の政治的解決」の問題も協議したと明らかにしたが、詳細には言及しなかった。
プーチン氏は同日のフランスのマクロン大統領との電話会談で「作戦目標はいかなる場合も達成する」と伝達。同日夜の露国家安全保障会議でも作戦は「計画通り」だと強調した。仏大統領府高官は「マクロン氏は今後、最悪の状況が訪れると予想している」とし、ロシアが攻撃を激化させ、ウクライナの被害が拡大することに懸念を示した。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、記者会見し、プーチン氏に直接対話などを呼びかけた。
ウクライナメディアによると、キエフでは4日未明(日本時間同日朝)にも爆発音が響いた。ロシア軍はキエフ包囲に向け、北方30キロ地点で兵站を整えているとされ、近く大規模な包囲作戦が行われるとの観測もある。キエフ西方のホストメリでも戦闘が続いた。(モスクワ 小野田雄一)