スポーツが未来を変える

びわこ成蹊スポーツ大学 黒澤寛己教授「学校文化の部活動、どう地域移行するか」 

黒澤寛己教授
黒澤寛己教授

大学卒業後に京都市立高校の教師として24年間勤務しました。その間、最も印象に残っているのは運動部活動の指導です。柔道部の顧問として、近畿大会や全国大会への出場のほか、インターハイや国民体育大会の競技役員などを経験しました。これらの貴重な経験が教師として成長できる糧になったと思っています。何よりも生徒たちが一生懸命頑張っている姿を見ることがうれしかったのです。

日本の運動部活動は、スポーツの競技力向上だけではなく、学校教育の一環としてさまざまな役割を果たしています。その中でも「生徒指導」の役割が大きいと考えています。「生徒指導」は単なる問題行動への対応だけはでなく、自己実現や自己指導能力を育成するという目的があります。運動部活動で得た経験を自分の進路実現や人生設計に役立てることができます。また、勉強やコミュニケーションの苦手な生徒が、楽しく安心して活動できる「居場所」としての機能も果たしています。その半面、近年では部活動における体罰などの行き過ぎた指導や教師の過重労働が社会問題となっているのも事実です。

そこで、文部科学省は、学校の働き方改革を踏まえた部活動の改革を2023(令和5)年から全国展開しようとしています。具体的には、中学校における休日の部活動を段階的に地域へ移行しようとしています。

しかし、部活動は長い年月をかけて学校文化として定着してきたという歴史があります。これまで、何度か外部へ委託しようとする取り組みはありましたが、十分な環境を整備することはできませんでした。今回の改革を進めるためには、部活動を代替するための人材や財源といった「受け皿」としての環境を整備することが重要だと考えます。それらを整えることなく、安易に外部委託するだけでは問題の解決にはなりません。

現在、私はそのために2つのことに取り組んでいます。1つ目は、滋賀県の地域部活動推進事業のアドバイザーとして、教育委員会とともに実践研究に取り組んでいます。2つ目は、今年4月からびわこ成蹊スポーツ大学で「部活動指導論」という科目を開講します。将来、顧問や部活動指導員として部活動に携わる学生を対象に、部活動の法的根拠や指導上の留意点、安全に配慮した効果的な指導方法について、私のこれまでの経験と実際の指導事例をもとに講義を行う予定です。

これらの取り組みが、運動部活動改革とスポーツの発展に寄与することを願っています。

黒澤寛己(くろさわ・ひろき)1968年、京都市生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科博士課程修了。博士(政策科学)・教職修士(専門職)専門は「スポーツ教育学」「スポーツ政策学」。京都市立の西京商業高校、伏見工業高校定時制、塔南高校に教諭、生徒指導主事として勤務。2017年からびわこ成蹊スポーツ大学教授。

スポーツによって未来がどう変わるのかをテーマに、びわこ成蹊スポーツ大学の教員らがリレー形式でコラムを執筆します。毎月第1金曜日予定。

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