ウクライナに侵攻しているロシア軍が仮に首都キエフを制圧した場合、国際世論の大半は暗澹たる思いで満たされるに違いない。一方、中国のインターネットユーザーの多くは「快哉(かいさい)」を叫ぶだろう。
ロシア軍によるウクライナ侵攻以降、中国のネット空間を支配しているのは、ロシアへの一貫した支持であり、非難されるべきは戦火を招く原因を作った米国と北大西洋条約機構(NATO)、そしてウクライナ自身だという論理だ。
「中国において世論は当局に操作されているので、ことさら重視する必要はない」。2年前、香港問題をめぐって議論していた際に北京の政治研究者がさらりと言った。たしかに一理ある。ただし、中国当局が世論をどのように誘導しようとしているのかを知ることは無駄ではない。
「進め、進め、進め! ウクライナ国内の麻薬中毒者とネオナチ分子を全て殲滅(せんめつ)せよ!」。中国のネット上で多数を占めるロシア支持者が発信しているのは、プーチン露大統領のプロパガンダそのままに、ウクライナ・ゼレンスキー政権の打倒をとなえるこうした好戦的な声だけではない。
「平和が一番いい。戦争で苦しむのは庶民だ」。そう訴えながらも「ロシアの事情はわが国がすでに判断を出している。進攻型の反撃(侵攻)は必ずしも不正義ではない」とNATOの東方拡大を懸念するロシアに理解を示し、侵略を正当化する意見もある。