「俺たちの前から消えてくれ」八街5人死傷事故 子供2人が死傷した両親の公判陳述詳報

現場検証に立ち会った梅沢洋被告=昨年7月12日
現場検証に立ち会った梅沢洋被告=昨年7月12日

千葉県八街市で昨年6月、下校中の市立朝陽小学校の児童の列に飲酒運転のトラックが突っ込み、児童5人が死傷した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)罪に問われた元運転手、梅沢洋被告(61)の第5回公判が2日、千葉地裁(金子大作裁判長)で開かれた。事故で亡くなった谷井勇斗くん=当時(8)=と重傷を負った弟の両親は法廷で陳述した。(以下要旨)

父親

俺はお前が酒飲んで運転して、突っ込んだことを絶対に許せない。子供たちがどれだけ怖くて辛かったか。(被告にも)死ぬまでつらい思いをしてほしい。俺たちの前から消えてくれ。子供には、悪いことをしたら謝らないといけないと教えてきた。(被告は)子供以下だ。(出所後も)月の命日には、事故の現場に勇斗の好きだったコーラとサイダーを供えてほしい。(供えているか)確認しに行く。

 千葉県八街市立朝陽小学生の列に飲酒運転のトラックが突っ込んだ事故の現場=2021年6月28日、八街市
千葉県八街市立朝陽小学生の列に飲酒運転のトラックが突っ込んだ事故の現場=2021年6月28日、八街市

母親

(事故当日の)2021年6月28日から私たち家族の人生はめちゃくちゃになった。子供たちを送り出したときは、いつものように帰ってくると思っていた。事故の現場に行ったとき、弟は畑で砂まみれで「痛い痛い」と言っていた。勇斗はトラックの下に横たわり、傍らには臓器のようなものが見えていた。警察から「お母さんは見ない方がいい」と言われ、事故後に初めて会えたのは納棺士の方がきれいにしてくれた後だった。

勇斗が自分で選んだランドセルは形が崩れ、ぼろぼろに破れていた。夫はトラックの運転手として10年以上誇りを持って働いていた。洗車してピカピカになった車を写真に撮って子供たちに見せることもあった。事故後、夫は「勇斗に申し訳ない」とトラックを運転できなくなり休職している。今後も乗る気はなく、正式にやめることになる。私は鬱に近い状態で、通院している。車も今も運転できない。

事故の事実を受け入れられないし、受け入れたくない。勇斗に会いたい。会いたくて会いたくて会いたくてたまらない。この事故は被告が全て悪いと思うが、母親として大好きな息子を守れなかった自分を責めずにはいられない。生きているのが辛く、勇斗のところに行きたいと思うが、夫や子供たちもいるのでそんなことはできない。

勇斗の成長をもっと見届けたかった。平凡でいいから普通の5人家族として過ごしていたかった。勇斗は裁判中に9歳の誕生日を迎えた。自転車を買って仏壇のそばに置いているが、勇斗は乗ることはできない。

運転することが分かっているのに酒を飲んだことは故意的な殺人としか思えないが、最高でも15年の刑にしかならない。被告が何年の刑になろうが私たちの苦しみは一生消えない。今すぐ殺してしまいたいくらい恨んでいる。刑を終えても償いが終わったわけではない。私たちの家は持ち家なので、簡単に引っ越すことはできない。

あなたに想像できますか。突然子供を失った親の気持ちを。7年か8年で人生を奪われた子供の気持ちを。心から謝ってください。5人の子供たちに心から謝罪してください。

懲役15年の刑には納得できない。法律の限界なら仕方ないと思うが、私は無期懲役や死刑になってもおかしくない罪を犯したと思っている。

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