JR九州新社長に古宮氏 持続可能な公共交通へ

JR九州の社長に就任する古宮洋二取締役専務執行役員(左)と青柳俊彦社長
JR九州の社長に就任する古宮洋二取締役専務執行役員(左)と青柳俊彦社長

JR九州は1日開いた取締役会で、古宮洋二(ふるみやようじ)取締役専務執行役員(59)が社長に昇格する人事を決定した。青柳俊彦社長(68)は会長に就き、唐池恒二会長(68)は相談役になる。4月1日付で、社長交代は8年ぶり。人口減少やコロナ禍による収益悪化で経営環境が厳しい中での船出となり、赤字ローカル線の見直しにも手腕が試される。社長交代で経営の立て直しを加速し、将来にわたって持続可能な公共交通の確立を目指す。

「コロナ禍で苦しい状況だが、環境に合った新しい会社に変わっていくのが今だと思う。元気な会社になることから始めたい」

古宮氏は福岡市の本社で開かれた記者会見で、こう抱負を述べた。

青柳氏は、今回の社長交代について、4月からの新たな中期経営計画を、新体制でスタートするのが望ましいと説明し、古宮氏について「バイタリティやアイデアにあふれている。企業価値の向上にも大いに貢献してもらった。いい社長になると信じている」と語った。

「ななつ星の男」

古宮氏は鉄道事業本部長や総合企画本部長など会社の主要ポストを歴任し、本業の鉄道を含め幅広い事業分野に精通している。

営業部長だった平成23年には、当時社長だった唐池氏から、豪華寝台列車「ななつ星in九州」導入に向け、プロジェクトの実務統括をまかされた。このとき、上層部に対してもはっきりとモノを言う古宮氏に対し、唐池氏は「最大の抵抗勢力になり得るが、味方にすれば誰よりも心強い」と見込んだという。古宮氏は「旅の質」を高めるさまざまな要素を提案し、業界では唐池氏とともに「ななつ星を走らせた男」として知られる。

数年前から、次期社長候補として有力視されてきたが、29年の九州北部豪雨で被災した日田彦山線をめぐる自治体との議論や、コロナ禍での経営環境悪化で青柳氏のリーダーシップが求められてきた。唐池氏が会長続投への意欲が高かったこともあり、現体制が7年9カ月にわたり継続。青柳氏の社長在任期間は、初代社長の石井幸孝氏の10年2カ月に次ぐ長さとなった。

ただ、青柳氏が昨年、福岡経済同友会の代表幹事に就任し、社外活動も求められる立場となったこともあり、新中期経営計画が始まるこの機にトップの若返りを図り、収益力を強化すると同時に、会社の成長を目指すことにした。

厳しい環境の船出

一方、青柳氏は28年に、会社発足以来の悲願だった東京証券取引所第1部への上場を果たした。全国のJRグループのうち、本州以外のいわゆる「三島会社」(北海道、四国、九州)では初めてだった。

また、人口減少社会を見据え、鉄道事業の立て直しに力を入れた。収支改善に向け、過去最大規模となる運行本数の削減や、これまで慎重だった赤字線区の一部公表にも踏み切り、路線維持に向けて地元自治体との協議も始めた。豪雨で被災し、不通となっている日田彦山線の添田(福岡県添田町)―夜明(大分県日田市)に関しては、鉄道での復旧を強く求める沿線自治体に対して、鉄道運営の厳しい実情を訴え続け、バス高速輸送システム(BRT)転換への合意に結びつけた。

鉄道事業をめぐっては、今年2月、国土交通省が赤字が続く地方鉄道路線の見直し方を検討する会議を立ち上げた。バスなど他の交通機関への転換を含め、存続の具体策が議論される予定で、今夏をめどに方針がまとまる。

持続可能な公共交通を確立するためには、他の交通手段への転換も含めた検討が求められ、自治体との協議など難しい局面で、トップが手腕を発揮することが求められる。

こうした今後の課題について、古宮氏は「現状をまず(沿線自治体や住民に)わかっていただくことが大事だと思う。BRTに変わることで、利用できる新しい乗り物になることもある。住んでいる方にとって何が一番便利かを考えないといけない」と語った。(一居真由子)

会員限定記事会員サービス詳細