「面白がって、何か感じて」 8050問題描く舞台

「アル中の役なので一度、酒飲んでアルコールに包まれながら稽古してみたい気持ちはある。ダメだけど」と笑う三宅弘城
「アル中の役なので一度、酒飲んでアルコールに包まれながら稽古してみたい気持ちはある。ダメだけど」と笑う三宅弘城

80代の親が50代の子供の生活を支える〝8050問題〟を2人芝居で描いた「命、ギガ長スW」(松尾スズキ作・演出)が4日から、ザ・スズナリ(東京都世田谷区)で再演される。初演は令和元年で、認知症気味の年老いた母親とニートでアルコール中毒の息子を主軸にした物語。息子を演じる三宅弘城は「意外にテーマはヘビー。面白がりながら、何か感じてほしい」と話す。

8050問題の見本のような母エイコ(ともさかりえ)と息子オサム(三宅)を、ドキュメンタリー作家志望の女子大生アサダ(ともさか、2役)が密着取材。だが、親子の動画を見たゼミの教授キシ(三宅、同)に問題を指摘され…。

初演は、松尾と安藤玉恵が舞台に立った。再演の今回は松尾が出ず、三宅・ともさかの長ス組と、宮藤(くどう)官九郎・安藤のギガ組に分かれて上演される。2組としたのは、芝居のバリエーションを楽しんでほしいという考えからだ。

「松尾さん、宮藤さん、僕なら、僕が一番、強そうな見た目のオサム」と話す。特技はボクシングと器械体操。テレビドラマで頑健な裸体をさらしたこともある。3人のなかでは最も、外見が一般的な引きこもりのイメージから遠い。「僕には回ってこない役だろうな、と思っていたから、(オファーは)予想していなかった」と笑い、「いろんな引きこもりがいる、という説得力が出るように、ともさかさんと稽古している。同じ役でも(演者によって)全く違うものになるはず」と話す。

ボケかかっている、ともさか演じる母親との漫才じみた掛け合いも見もの。亡くなった実母を思い出すという。「いきなり『時計を煮て食べる』なんて言い出したりね。それを『分かった分かった』ってなだめて…」と懐かしそうに目を細める。「この作品は親子関係をポップに描いているけど、現実はきついんだろうな、というのも分かる。こんなご時世ですが、演劇は心を豊かにするもの。ぜひ劇場で見ていただければ」と話した。

4月3日まで。問い合わせは大人計画、03・3327・4312。その後、大阪、福岡、長野で公演する。(三宅令)

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