北、制裁回避の「灰色戦略」 4月に衛星打ち上げも

27日に行われた偵察衛星開発計画に基づく実験で、宇宙から撮影された朝鮮半島(朝鮮中央通信=共同)
27日に行われた偵察衛星開発計画に基づく実験で、宇宙から撮影された朝鮮半島(朝鮮中央通信=共同)

【ソウル=時吉達也】北朝鮮は28日、前日の弾道ミサイル発射が偵察衛星の開発に向けた工程だったと主張した。衛星を搭載する長距離ロケットの打ち上げは、必要な発射技術が大陸間弾道ミサイル(ICBM)とほぼ変わらないとされる。米本土を射程とするICBMと同様の脅威を示しつつ、決定的な対立局面には進まない「灰色戦略」で、追加制裁を当面回避しようとする狙いがうかがえる。

軍事偵察衛星の開発は、昨年1月に打ち出された国防の「5カ年計画」に盛り込まれた北朝鮮の重要課題。「人工衛星の打ち上げ」と称して事実上の長距離弾道ミサイル発射を繰り返した2016~20年に続く、新たな「国家宇宙開発5カ年計画」が21年に始まったことも、今月に入り判明している。

申範澈(シン・ボムチョル)元韓国国防相補佐官は「今回公表された衛星写真のみでは、衛星を軌道に乗せる技術などが備わっているのかは不明だ」とした上で、実際に衛星が運用されれば「米韓軍などの動向を把握する手段がない北朝鮮にとって、攻撃目標を設定する上で相当な意義がある」と指摘する。

北朝鮮は10年前の12年4月、故金日成(キム・イルソン)主席の生誕100年を迎えた同月15日の「太陽節」を前に「人工衛星」を打ち上げた。生誕110年を迎える今年も太陽節を盛大に祝う方針が公表されており、世宗研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)北朝鮮研究センター長は「今後数回の試験を経て、早ければ生誕記念日の前にも偵察衛星を発射する可能性がある」とみている。

弾道ミサイル技術を用いた北朝鮮の発射行為は国連安全保障理事会の決議で禁じられ、過去の「人工衛星」発射時には制裁決議が採択されるなどしてきた。

しかし、米中対立の深刻化、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた米露関係の悪化を受け、安保理による対応は期待できない状況だ。北朝鮮が国際社会の対応を見極めつつ挑発のレベルを高めれば、「そのままICBM発射に進む可能性」(鄭氏)も現実味を帯びる。

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