露の核威嚇、米「エスカレートの危険」と非難

プーチン露大統領(タス=共同)
プーチン露大統領(タス=共同)

【ワシントン=渡辺浩生】ウクライナへ軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領が「核抑止力部隊」に厳戒態勢へ移行するよう命じたことについて、米国防総省高官は27日、「不必要な措置であるだけではなく、エスカレートする可能性があるものだ」と批判した。米国や同盟諸国の介入を「核の脅し」で拒否する狙いとみられる。バイデン政権はロシアの核態勢の変化に警戒を強める考えだ。

高官は記者団に対して、プーチン氏の命令について「判断ミスが起きれば、事態を一段と危険にしかねない」と強い懸念を示し、同時に「米国が自らと同盟国とパートナーを守る能力」は、核拡大抑止力も含めて自信があると強調した。

ホワイトハウスのサキ報道官も米ABCテレビに対して「存在しない脅威を作り出してさらなる侵略を正当化するプーチン氏のパターンだ」と非難した。

一方、同高官はロシア軍の動きについて、ウクライナ国境沿いやベラルーシに展開した戦闘部隊のうち3分の2がウクライナ国内に侵入し、過去24時間で投入兵力を増強させたことを明らかにした。

ウクライナ側の強固な抵抗によって、ロシア軍の侵攻のペースは遅くなっており、主要都市の制圧には至っていない。一部の部隊に燃料不足や兵士の士気低下がみられるという。

そうした中、核担当部隊への厳戒命令は、侵攻が予想以上に難航する一方、米国の同盟諸国がウクライナへの軍事支援や対露経済制裁を拡大する中、「核の脅し」を使って西側の介入を阻止したいプーチン氏の思惑があるとみられる。

プーチン氏は24日の軍事作戦を表明した演説で「ロシアは最も強力な核兵器保有国のひとつだ」と誇示し欧米諸国を牽制(けんせい)していた。

中露や北朝鮮など核保有の現状変更勢力が自ら仕掛けた通常戦争で核の脅しを使う危険は安保専門家から指摘されてきた。

バイデン政権が、米軍や北大西洋条約機構(NATO)のウクライナへの直接の軍事介入を否定してきたのは、2大核保有国の軍事衝突を回避する意味合いもある。米国はプーチン氏の命令が実際に核兵器配備の動きを伴うものか注視するが、現在進行の紛争における核をめぐるエスカレート抑止という新たな対応が迫られたといえる。

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