主張

経済安全保障法案 備え強める重要な一歩だ

政府が経済安全保障推進法案を閣議決定し、国会に提出した。

経済活動や先端技術を外交・軍事と一体的に捉える経済安保の取り組みは、厳しさを増す安保環境に対処し、国民生活の安全と安心を守るために必要不可欠である。

同法案による法整備はそのための重要な一歩となる。与野党は審議を深め、確実に成立させなくてはならない。

特に、覇権主義的に振る舞う中国と隣り合う日本にとって経済安保は喫緊の課題だ。欧米よりも遅れた法整備を進め、足並みをそろえる布石としたい。

同法案の意義には、大きく分けると2つの側面がある。

まずは海外の脅威から経済や暮らしを守ることだ。法案には、半導体など重要物資の供給網確保が盛り込まれた。これはエネルギー安保や食糧安保と同じだ。海外からの供給が途絶えるリスクに備えなくてはならない。基幹インフラ設備の事前審査導入も、中国やロシア、北朝鮮など海外からのサイバー攻撃で社会・経済機能が停止する事態を避けるためだ。

もう一つは、軍事転用できる技術領域の広がりに対応した先端技術の育成や保全だ。法案にある官民の技術開発や特許非公開がそうだ。米中の技術覇権争いにみられるように人工知能(AI)や量子などの技術は軍事に直結する。各国が官民で開発を進める中で日本の対応は不十分だった。機微技術が国外で悪用されることへの備えを含めて対応を急ぐべきだ。

問われるのは一連の施策の実効性である。法案にはこれを担保するための罰則もあるが、経済界の反発に配慮し、一部の罰則対象を絞り込んだ動きは気になる。

確かに法案で企業活動への政府関与は強まる。自由な経済活動が阻害される懸念はあろうし、不要な規制を避けるのも当然だ。ただ、規制強化の動きは国際潮流であり、日本は総じて規制が緩かった点は認識しておくべきだ。

折しも、ロシアのウクライナ侵攻が世界経済に及ぼす影響が懸念されている。日本の厳しい安保環境を踏まえれば経済安保の取り組みに遅滞は許されない。法案に入らなかった機密情報の取り扱い資格制度「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」など、経済安保を強化するために必要な課題もまだ残されている。それらの検討も同時に進めたい。

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