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〝漫画家の聖域〟を紹介 浦沢直樹「漫勉neo」

浦沢直樹 撮影・納冨康
浦沢直樹 撮影・納冨康

いかに漫画が身近な存在とはいえ、プロの執筆現場を見たことがある人は少ないだろう。漫画家は執筆時に何を考え、どんな工夫をしているのか。「浦沢直樹の漫勉neo」は、日本を代表する作り手の〝創作の聖域〟を、同じ漫画家の視点から垣間見る珍しい番組だ。

「創作現場に入ることは、作品の深いところまで見つめるきっかけになります。漫画は『1人1ジャンル』というか、同じ職種とは思えないくらいそれぞれ全く違った描き方があるんですよ。これ(作画の映像)を残すのは、ちょっとした責務じゃないかなと思うんです」

放送開始は平成26年。令和2年のリニューアルを経て、自身を含め「作画風景をどうしても見たかった」29人の執筆現場を紹介してきた。3月2日からは3週連続で新作回を放送。トップバッターは、自転車競技を題材にしたスポーツ漫画「弱虫ペダル」の渡辺航(わたる)さんだ。

注目点は「ペンスピード」だという。

「作品全体のムードを象徴するのは、ペンスピードだと思っています。早い人は躍動感が出るし、ちょっとずつ進める人は繊細さが出ています。『弱虫ペダル』のスピード感や躍動感は、『漫勉』史上最速でした」

9日は「ケルン市警オド」の青池保子(やすこ)さん(代表作「エロイカより愛をこめて」)、16日には読み切り作品「パンゲアね」の新井英樹さん(代表作「宮本から君へ」)の執筆にそれぞれ密着する。

自身はこれまでに「YAWARA!」「20世紀少年」などのメガヒット作を連発し、平成30年からは「連続漫画小説 あさドラ!」を連載中だ。「〝ライバル〟は旧作なんですよ」と語る。

「自分の作ってきた作品はもちろんかわいい。けれど、今描いている作品はそれを超えなくてはいけない。そうすると愛憎相半ばするというか、『あの作品面白かったです』っていわれると、『今の方が面白いわい』と思うんですね。ただ、僕はそれが大事なことだと感じているんです」

漫画界では年上のレジェンド漫画家たちが今も現役で執筆作業を行う。番組を通じ、刺激を受け続けているという。

「漫画家に定年はない。描けるうちはずっと描くというのがわれわれの宿命です。同時に、手塚(治虫)先生らが戦後に始めた、紙とペンだけでエンタメを作るという漫画文化をいい形で次世代に伝えていければと思います」(本間英士)

うらさわ・なおき 昭和35年生まれ。東京都出身。58年に漫画家デビュー。「YAWARA!」「Happy!」「MONSTER」「20世紀少年」など代表作多数。平成20年、日本漫画家協会賞大賞受賞。海外での評価も高く、仏アングレーム国際漫画祭最優秀長編賞、米アイズナー賞アジア作品最優秀賞を受賞。音楽活動など他分野でも活躍し、文化放送のラジオ番組「純次と直樹」(日曜午後5時)にも出演している。

「浦沢直樹の漫勉neo」はNHKEテレ、3月2、9、16日の午後10時。

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