今年1月、電気自動車(EV)参入の本格検討を表明したソニーグループは現在、事業を担う新会社「ソニーモビリティ」の準備を急ピッチで進めている。今春設立に向けて、転職サイトには自動車業界の経験者を募集するソニーモビリティの求人が並ぶ。EV試作車「VISION―S」の開発チームも自動車業界出身者が半数以上を占めており、こうした専門人材をいかに集められるかが事業の成否を握る。
経営の最優先事項
パートナー企業の選定も重要になる。EV試作車の製造はオーストリアのマグナ・シュタイヤーに委託。基幹部品は、世界的な自動車部品メーカーであるドイツのボッシュやコンチネンタルなどから供給を受けた。間接的な取引先を含めると、協力企業は100社を超える。
EV事業に参入するとなれば、開発にとどまらず、量産体制や販売・アフターサービスの確立などにも取り組む必要がある。開発責任者の川西泉常務も「考えるべきことが多く、土日も含めて、ほぼ毎日、吉田さん(憲一郎会長兼社長)と話をしている」と明かす。数々の製品を生み出してきたソニーでもEV参入は大きな挑戦であり、経営の最優先事項になっていることがうかがえる。
「この10年間のメガトレンドはモバイルだった。次の10年はモビリティー(乗り物)になる」。2年前の米家電・IT見本市「CES」で、「VISION―S」を披露した吉田氏はこう語った。