付き添い、疲弊する保護者
国内で心臓移植を待機している子供の家族は、どのような悩みを抱えているのか。
一般的に病気で入院する乳幼児らの世話は「入院基本料」に含まれているが、入院中の子供の精神的サポートや発達促進の側面からも家族の関与は欠かせず、特に子供の補助人工心臓装着には、親の付き添いを条件とするケースが多い。
とはいえ、一日中病室で容体を気にかけながら子供の世話を続け、夜は簡易ベッドや子供の小さなベッドで寝泊まりする付き添い家族の負担は大きい。
「ゆっくりご飯を食べたりシャワーを浴びたりする時間もない」「自分の食事は毎日コンビニで購入するしかない」「大部屋で神経を使い、寝られない」
日本小児循環器学会移植委員会の副委員長で国立成育医療研究センターの進藤考洋医師によると、心臓移植を待つ子供の親へ聞き取り調査を行ったところ、心身の疲弊を訴える声が多く上がったという。「ご家族は子供のためと思って頑張っているが、自宅のようにリラックスできず、精神的に休まる時間がない。抑鬱状態になる方もいる」。進藤医師はこう説明する。
聖路加国際大とNPO法人「キープ・ママ・スマイリング」が令和元年12月~2年2月にウェブで行ったアンケートでは、1カ月未満の短期で入院した子の保護者の85%、長期入院した子の保護者の86%が、それぞれ付き添い入院をしていたと回答。仕事をしていた親らのうち、7割が子供の入院で就労状況を変更していた。また、付き添い入院をした保護者の半数以上が体調不良になったといい、食事のバランスが乱れたり睡眠不足になったりした人はいずれも9割以上に達した。進藤医師は「経済的なサポートは大事だし、家族の付き添い自体をサポートする社会の仕組みも必要だ」と訴える。
一方で、患者と家族との面会時間の短さに悩む声もある。もともと小児病棟は感染症予防の観点から、子供の面会を制限しているところが多いが、新型コロナウイルスの感染拡大で、今は親の面会時間さえも制限されるようになっている。
「子供たちの発達を考えれば、いろいろな人に会ったり、経験をしたりすることは大変重要だが、感染予防を考えると、現状は厳しい」と進藤医師。「病院としても入院している子供の社会性をはぐくむより一層の努力が求められている」としている。
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