岸田文雄首相は25日朝、ロシアによるウクライナへの大規模侵攻を受け、官邸で記者会見に臨み、追加制裁措置を公表した。詳報は以下の通り。
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「昨24日、ロシアはウクライナへの侵攻を開始しました。これまで国際社会において緊張緩和に向けさまざまな外交努力が行われるなか、わが国としてもさまざまなレベルでロシアに対し外交による解決を働きかけてきました。
私自身も先週17日に日露首脳電話会談を行い、プーチン大統領に対し力による一方的な現状変更ではなく、外交交渉により関係国にとって受け入れられる解決方法を追求すべき旨、直接働きかけを行うとともに、ウクライナなど各国との電話会談、G7(先進7カ国)テレビ首脳会談などを通じ、G7、EU(欧州連合)、そして国際社会の結束の強さを示してまいりました。
こうした国際社会の懸命の努力にも関わらず、行われた今回のロシア軍によるウクライナへの侵攻は、力による一方的な現状変更の試みであり、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害する明白な国際法違反です。国際秩序の根幹を揺るがす行為として断じて許容できず、厳しく非難します。わが国の安全保障の観点からも、決して看過できません。G7をはじめとする国際社会と緊密に連携し、ロシアに対して軍の即時撤収、国際法の順守を強く求めます。
この事態を受け、第1にG7をはじめとする国際社会と緊密に連携し制裁措置を強化いたします。具体的には、23日に発表した制裁措置に加え、資産凍結と査証発給停止によるロシアの個人、団体などへの制裁。2つ目としてロシアの金融機関を対象とする資産凍結といった金融分野での制裁。3つ目としてロシアの軍事関連団体に対する輸出、国際的な合意に基づく規制リスト品目や半導体など、汎用(はんよう)品のロシア向け輸出に関する制裁の3分野における措置を速やかに実施をいたします。
第2にウクライナ在留邦人の安全確保のため全力を尽くします。ウクライナの在留邦人に対しては、これまで累次にわたり退避を呼びかけてきた結果、2月23日時点でウクライナ人のご家族をお持ちの方など自らウクライナ残留を希望される方が約120名へとなっております。状況が厳しさを増す中、引き続きこうした方々の安全にも最大限努力をして参ります。
具体的には松田(邦紀)大使以下、現地の日本大使館ができる限りの手段を講じ、邦人保護に取り組みます。ウクライナの隣国であるポーランドに陸路で退避する場合の支援などを行うため、西部のリビウに臨時の連絡事務所を設けました。ポーランド政府からは、邦人の円滑な受け入れについてご協力をいただける予定であり、同国から他の国へと移動するためのチャーター機を既に手配済みです。
第3に、私自身、首脳外交を積極的に行い、またさまざまなレベルでG7をはじめとする国際社会と緊密に連携し、外交的な取り組みを進めてまいります。
第4に今回の事態によりわが国経済社会に生じるさまざまな悪影響を最小限にとどめるよう取り組みます。まずエネルギーの安定供給についてです。現時点では世界の原油供給はロシアの侵攻によっても断絶しておらず、対ロシア経済制裁はエネルギー供給を直接阻害するものではありません。
また国内には現在、原油については国、民間あわせて約240日分の備蓄があり、LNG(液化天然ガス)についても電力会社、ガス会社において2週間から3週間分の在庫を保有しています。このため、エネルギーの安定供給に直ちに大きな支障を来すことはないと認識をしております。
IEA(国際エネルギー機関)や関係国と協議を行っている国際協調での備蓄放出や産油国・産ガス国への増産の働きかけなど、関係国や国際機関とも連携をしながら、必要な対策を機動的に講じ、国際的なエネルギー市場の安定化とわが国へのエネルギー安定供給の確保に万全を期していきます。
そして原油など燃料価格高騰に対して国民生活や企業活動への悪影響を最小限にいたします。具体的には当面は原油価格の激変緩和事業を大幅に拡充、強化し小売価格の急騰を抑制します。本対策を中心とし業種別対策や地方の取り組み支援、中小企業対策なども含む緊急対策を官房長官のもとに設置した関係閣僚会合において早急に取りまとめます。
電力、ガスの料金についても燃料費が上昇したとしても、急激な価格上昇が起こらないように取り組みます。さらに貿易保険の迅速な保険金支払いなど輸出入などの事業活動に影響を受ける日本企業の支援も講じてまいります。
ロシアによるウクライナ侵攻は国際秩序の根幹を揺るがす深刻な事態です。G7をはじめとする国際社会と緊密に連携して対応してまいります。詳細はこの後、関係省庁から説明をさせます。私からは以上です。