ロシア軍の侵攻がウクライナ全土に及び、首都キエフ近郊などで戦闘が激化している。現地にゆかりのある日本国内の関係者らは惨劇に心を痛め、知人らを思いやる声を寄せた。
「ニュースを見て、自分が目にしていることが信じられない」。女子テニスの大坂なおみ選手は自身のツイッターにこうつづり、ショックをあらわにした。
メッセージは「あなた方のことを考え、あなた方のために祈っていることを知ってほしい」と結ばれ、ウクライナの国旗と同じ黄色と青色のハートマークが2つ添えられた。
ウクライナ料理店「ベトラーヴ・ビストロ・ジロー」(東京都渋谷区)を営むシェフの飯島二郎さん(45)は、キエフの在ウクライナ日本大使館で料理長を務めた経歴がある。
「日本に帰りたくないと思うぐらいよい国だった」と振り返り、「本当に優しく、ほがらかな人たちが死の危険にさらされている。遠く日本にいても耐え難い」と怒りをぶつけた。
東京都日野市は昨夏の東京五輪・パラリンピックで、ホストタウンとして、ウクライナの空手選手団を受け入れた。「礼儀を重んじた素晴らしいスポーツマンばかりだった。彼らの安否が心配でならない」。担当した同市企画部の平義彦さん(53)は不安を口にした。選手団は市内で事前キャンプを2回実施。大会直前の昨年7月には、空手道場に通う子供たちが選手団の練習を見学し、市職員らが激励会を開くなど交流を重ねた。大会後もニュースを通じ、選手たちの活躍を見守ってきた平さん。「どうか全員、無事でいてほしい」と願いを込めた。
ウクライナ人の妻を持つ埼玉県上里町の神職、梅林正樹さん(49)はロシアの侵攻に「ショックで言葉も出ない」と漏らす。
民俗学を学ぶため2000(平成12)年から約8年間、キエフの大学に留学し、妻と出会った。当時は治安がよく、安全な国の印象が強く、触れ合ったウクライナ人たちは「親しくなると一気に打ち解ける人情味あふれる人たちだった」と振り返る。
連絡を取り続ける留学時代の指導教授は、ロシア軍の侵攻を前にキエフから脱出を図ったが、激しい渋滞に阻まれ、諦めて戻らざるを得なかった。梅林さんは「ウクライナとロシアは本来兄弟国だったはず。こんな戦争、あってはならない」と言葉を絞り出した。