岸田首相記者会見詳報

(2)「アジアの事態を仮定で話すのは不適切」

会見する岸田文雄首相=25日午前、首相官邸(矢島康弘撮影)
会見する岸田文雄首相=25日午前、首相官邸(矢島康弘撮影)

=(1)から続く

25日朝の岸田文雄首相の記者会見は、冒頭の説明が終わり、内閣記者会と首相の質疑応答が続いた。

--ロシアのエネルギー産業を対象にした制裁措置は今後あり得るのか

「はい。まずは本日発表したこの措置を速やかに実施すべく、必要な手続きを進めるとともに、引き続きわが国として今後の状況を踏まえつつG7(先進7カ国)をはじめとする国際社会と連携して適切に取り組んでまいりたいと存じます。今後ともG7をはじめとする国際社会と緊密にこの情報交換、調整を行いながら対応を考えてまいります」

--今回の軍事侵攻と制裁措置を踏まえ、今後の日露関係と平和条約交渉への影響をどう考えるか

「はい。ご指摘の北方領土問題に関するわが国の立場は変わりません。この変化はありません。しかしながらこの北方領土交渉、さらにはそれに関連して共同経済活動、こうした取り組みがあるわけですが、こうしたことへの影響については現時点において予断することは控えたいと思っています」

--バイデン米大統領は国際銀行間通信協会(SWIFT)の国際決済ネットワークからのロシアの排除を選択肢と言及しているが、その可能性はあるのか。今回の制裁が露軍の侵攻の歯止めになるほど厳しいものになったと考えるか

「はい。まずわが国の制裁については、資産凍結と査証発給停止、金融機関に対する制裁、そして輸出に関する制裁、こうしたものを考えており詳細については、また後ほど事務方から説明をさせていただきたいと思います。

そしてこの制裁については米国そしてEU(欧州連合)をはじめとする関係国と緊密に意思疎通を図り情報交換を行った上で、制裁を決定したということであります。G7をはじめとする国際社会の連帯の強さを示すことができると考えております。そして今後については状況を見ながら、引き続き、そうした連帯を大事にしながら対応を考えていくということになると考えます」

--2014年のクリミア併合に比べて、今回の経済措置は米欧諸国と緊密に連携して実施されている。どのような考えからこうした措置を打ち出したのか

「はい。あの国際情勢は、国際情勢全体は2014年当時と比べても大きく変化をしています。こうした国際情勢をしっかりと考えたうえで、特にG7をはじめとする国際社会の連帯、連携、これは重要であるという認識のもとに緊密な調整を行って、今回の制裁を決定したということであります。

あの国際社会の情勢をしっかりとこの把握した上で関係国との調整の結果、制裁を決定したというのが今回の内容ということであります。この内容について引き続き情勢の変化も見ながら、この連携を大事にしながら取り組みを、今後の取り組みについて考えていくというのがわが国の対応であります。こういった考え方に基づいて制裁等について決定をし、取り組んでいるというのが現状であります」

--アジアで同じような現状変更は十分ありえるが、そうなった場合は経済制裁だけで歯止めにすることはできるのか

「今回のウクライナ侵攻は欧州のみならず、アジアを含む国際秩序を、国際社会の秩序に影響する大変深刻な事態であると認識をしています。力による現状変更は認めないという意思をわが国としてもしっかり示していかなければならないと考えています。そして、このご質問のアジアにおいての事態については、これは仮定を持って、仮定の話として申し上げることは適切ではないと思います。

いずれにせよ今申し上げたような考え方、力による現状変更は認めないという強い姿勢を示していくことは、国際社会の全体の、アジアを含む国際社会全体の秩序ということを考えても重要であるという認識をし、政府としても、わが国政府としてもしっかりと発信をしていきたいと考えます。以上です」

--G7の取り組みが効果があったと思うか。ロシアの行動をエスカレートさせないために日本政府が取るべき外交努力は何か

「あのわが国のみならず、国際社会、世界各国がロシアに外交手段を通じて緊張緩和へ向かうべきであるということを働きかけました。しかし残念ながら、今回ウクライナ侵攻という事態になってしまいました。このロシアに国際社会としての強い意志を示すことが今、何よりも求められていると思います。

そして、この国際社会がいかに連帯してそして強い連携のもとに、ロシアに対して厳しいこの評価をし、そして厳しい制裁を科している、この姿を示すことが重要であると思います。こうした国際社会のこの連携の姿を示すことが今後の国際社会の秩序を守る上でも重要であると認識をし、わが国政府としましても、そういった、この連帯に、連携にしっかり貢献をしていきたいと考えます。以上です」

=(3)に続く

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