「狙いはウクライナ政権転覆」 仏モンペリエ大、キャロル・グリモー・ポテル氏

仏モンペリエ大のキャロル・グリモーポテル教授(本人提供)
仏モンペリエ大のキャロル・グリモーポテル教授(本人提供)

ロシアのウクライナ侵攻は食い止められるか。仏モンペリエ大のキャロル・グリモー・ポテル教員に聞いた。

米欧は、結束してロシアに制裁圧力をかけている。ロシア産ガスに依存する欧州のため、米国は液化天然ガス(LNG)を融通しているが、代替に足る量ではない。しかも、厳しい対露制裁は、欧州にブーメラン効果となって返ってくる。特に、金融制裁の打撃は深刻だ。制裁は効果を生むのに時間を要するため、欧州には大きな試練となる。

北大西洋条約機構(NATO)は1999年、域外の親露国ユーゴスラビア(当時)を空爆した。欧州の危機でも、今回とは事情が全く違う。当時はソ連崩壊後の移行期で、ロシアの力は弱かった。NATOが攻撃したのはユーゴ軍であり、露軍ではない。今回、米欧がウクライナを軍事支援するため、結束して露軍と対決するとは考えられない。NATOには、介入の根拠となる国連安全保障理事会決議すらない。

米欧は侵攻寸前まで、対話による緊張緩和を目指した。ロシアと対話を始めるには、2015年の和平合意に沿って、ウクライナ東部の親露派地域の問題を解決することが不可欠だったが、それができなかった。ロシアはいま、ウクライナの政権転覆を狙っている。親露派政権の樹立が、かつての支配地域を再征服することになるからだ。(聞き手 三井美奈)

会員限定記事会員サービス詳細