ウクライナのコルスンスキー駐日大使は25日、日本外国特派員協会で会見し、ロシアによる軍事侵攻で民間人が巻き込まれていることを訴え、米欧に対して厳しい対露制裁とともに対ミサイル防御の装備提供を求めた。ウクライナ北部のチェルノブイリ原発が露軍に制圧されたことに関し、露側が「管理方法を知らない」として核物質の汚染が起きる可能性を指摘した。
コルスンスキー氏は、壊滅的な状況を防ぐため「全てのパートナー国に(ロシアへの)厳しい制裁を科すことを求める」と述べ、早期の実施を訴えた。
戦況については、露軍への反撃で多数の戦車を破壊し航空機も撃墜していると説明。米英などから防衛装備品の提供を受けたことに謝意を示し、トルコの無人航空機は「非常に効果的だ」と述べ、露軍との交戦で使用していることを明らかにした。一方で、「巡航ミサイルに対する装備がない」と強調し、対ミサイル防御の装備が必要だと語った。
チェルノブイリ原発に関しては「警備員や職員が拘束され、人質になっている」と指摘した。
事故があった原発内には高レベルの放射性物質が残っていて、汚染拡大を防ぐ特別設備や放射能の監視システムなど安全確保に向けた運用が「できない」と強い懸念を示した。運用方法について露側は知らないと批判し、占拠を「今すぐやめるべきだ」と警告した。
露軍の激しい攻撃を受けている地域から市民が西部への避難を試みているとし、避難民・難民問題を抱えていることも指摘した。
北大西洋条約機構(NATO)加盟に向けた意思が変わらないことを示し、「もしウクライナが加盟国だったら、戦争はなかっただろう」と話した。
侵攻を決めたプーチン露大統領に対し、仏独首脳らがモスクワを訪れて会談するなど欧米の外交努力が続けられる中で軍事作戦を入念に計画していたと非難。「戦争犯罪者」と呼ぶべきだと激しく批判した。
また、中国政府は「(ロシアのウクライナ侵攻に)興味がないのではないか」と指摘。「ロシアにとって(中国は)大きな友人だ」とも語り、中国に停戦に向けた協力を呼びかけた。
(坂本一之)