露国営テレビ「政治喧伝」一色に 1週間で激変

【モスクワ=小野田雄一】ロシアのプーチン政権の統制下にあり、多くの国民が主要情報源とする国営テレビは、ウクライナ侵攻の1週間前から、ウクライナの「罪」を強調するプロパガンダ(政治宣伝)を大々的に放送した。軍事介入の正当性を国民に植え付けようとしたのは明白だ。

米欧は昨年11月以降、ロシアによるウクライナ侵攻を警告してきたが、国営テレビの報道内容にそれ以前と比べ特段の変化はみられなかった。北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大をめぐるロシアと米欧との交渉も、一般ニュースの一つとして扱われ、新型コロナウイルスなどの話題が多くを占めた。

今年2月4日に北京冬季五輪が開幕すると、ウクライナ関連ニュースの扱いはさらに縮小。ロシアが表明したウクライナ国境付近からの「軍備撤収」の様子を伝える程度にとどまった。

しかし17日、ウクライナ東部を実効支配する親露派武装勢力が「ウクライナからの攻撃の激化」を発表すると状況は一変。親露派地域で起きたとする爆発、壊れた住居や地面に落下した不発弾などの映像を繰り返し放映したほか、ロシアに避難した住民のインタビューも繰り返し流した。

ウクライナは攻撃を一貫して否定。露メディアの一部も攻撃を否定する現地住民の話を伝えたが、国営テレビはそうした情報があることを伝えなかった。

国営テレビは21日、「独立」承認を求める親露派指導者のビデオ声明を放送。独立承認を協議した政府会議の様子を開始から終了まで放映する異例の対応を取った。その後、プーチン大統領の演説と独立承認手続きの様子を放送。合間にウクライナを非難するニュースが絶え間なく流された。

ウクライナに侵攻した24日以降は、「特別軍事作戦」開始を表明したプーチン氏の緊急演説や、前進するロシア戦車などの映像を繰り返し放送した。一方、国内各地で反戦デモが起きたことは伝えていない。

24日には露当局が「政府発表以外は報道するな」とする通達を報道各社に出すなど、今後、情報統制がさらに進むのは確実だ。

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