乳がん術後「支えたい」 ウイッグ会社が人工乳房開発

完成した人工乳房の説明を受ける女性(左)=昨年12月、大阪市内
完成した人工乳房の説明を受ける女性(左)=昨年12月、大阪市内

乳がんで失った乳房の代わりに装着する人工乳房の製作・販売を、大阪の医療用ウイッグ(かつら)販売会社が始めた。治療の副作用で髪が抜けたり、乳房を摘出したりと、がんは見た目に影響を及ぼしやすい。外見の変化に悩む女性に寄り添ってきた企業のノウハウを生かしたいという。

昨年12月下旬、大阪市内の直営店で音楽講師の女性(59)は、完成した人工乳房を左胸部に装着した。女性は鏡を見つめ「なくなった胸が戻ってきた感じ。違和感もない」と満足げな表情を浮かべた。

約3年前に乳がんの手術を受け、左胸を全て摘出した女性。術後は大きめの服を着たり、下着にパッドを入れて胸部に膨らみをつくったりしていたが、温泉に入りづらくなった。

家族と旅行に出かけた際、娘が手術痕をタオルで隠してくれたことも。気兼ねなく温泉につかりたいとの思いが募った。

女性は抗がん剤の副作用による脱毛のため、「グローウィング」(大阪市北区)の医療用ウイッグを使っていた。同社が人工乳房の開発を進めていると知り、製作を依頼。後日、人工乳房を装着して久しぶりに温泉を楽しんだという。

同社の人工乳房はオーダーメードで、胸部を3Dスキャナーで測定して製作。独自に配合した特殊なシリコーン素材のため、接着剤なしでも肌に密着する。

依頼者の肌色に合わせて着色し、血管やホクロも忠実に再現。水中でも、運動しても外れないという。同社の直営店を訪れるのは乳がん患者らがほとんどで、「トータルで悩みをサポートできる」(同社)として昨年11月に事業化した。

堀江貴嘉(たかよし)社長は「ウイッグと人工乳房の両方の相談ができ、がん患者らの心的な負担軽減につながるのではないか。乳房の再建手術以外にも人工乳房という選択肢があると知ってもらえれば」と話した。

費用助成の自治体も

女性の9人に1人が罹患(りかん)するとされる乳がん。手術で摘出した乳房を再建するには、患者自身の皮膚や脂肪を移植したり、胸部を切開して人工乳房を入れたりする方法があるが、病状や術後の経過によっては断念せざるを得ない。

そこでもう一つの選択肢となるのが、体への影響が少ない装着タイプの人工乳房だ。

オーダーメードで10万円以上するものが多く、患者にとって金銭面の負担は小さくない。このため、装着タイプの人工乳房の購入費用を助成する自治体もある。

兵庫県は令和3年度から神戸市や姫路市など県内の一部市町とともに、上限5万円を助成する事業をスタート。所得制限はあるが、人工乳房や医療用ウイッグの購入が対象となる。大阪府内では富田林市や泉佐野市などが人工乳房の購入に上限1万~2万円を補助する。

兵庫県の担当者は「がんは身近な病気。患者に寄り添い、幅広くサポートしていきたい」としている。(北野裕子)

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