古き良き昭和漂う「町中華」地域を越えて人気

レンゲで崩すと、パラリ。半世紀変わらぬ「慶修」のチャーハン=東京都板橋区(いずれも酒巻俊介撮影)
レンゲで崩すと、パラリ。半世紀変わらぬ「慶修」のチャーハン=東京都板橋区(いずれも酒巻俊介撮影)

定番の「ラーメン半チャーハンに餃子セット」、夏の訪れを告げるのは「冷やし中華始めました」の貼り紙…。どんな街にも、土地に根ざし、愛される中華料理店が存在する。そんな「町中華」と呼ばれる店がいま、その地域を越えて人気を集め、家庭料理を町中華風にしてしまう調味料まで登場するほど注目されている。

町中華の一つ、東京都板橋区にある「開運中華慶修」。自慢は昭和47年の開店当時から半世紀変わらない、チャーハン(スープ付き、600円)だ。

厨房(ちゅうぼう)で店主の柚木慎也さん(49)が中華鍋を勢いよく振ると、卵と混ざった米が宙に舞う。具材は細かく刻んだなると、チャーシュー、ネギの3つ。具材を加え、しょうゆや塩、香りづけのごま油を素早く混ぜながら炒める。最後はお玉でまとめ、そのまま盛り付ける。八角形の皿の上のチャーハンは、きれいなドーム状になった。

レンゲですくうと、ドームが崩れ、米粒がパラパラしていることが分かる。柚木さんによるとパラパラにするコツは「油をあまり入れないこと」と語る。油が多すぎると水っぽくなり、しかも、もたれるからだという。さらに「米を直火に当てること」。中華鍋を振る際に鍋を少し傾けることで、飛んだ米が直接、コンロの火に当たる。こうすることで、油っぽさを飛ばすことができるという。

柚木さんは慶修の2代目。先代で父の稔さん(79)から継ぐ前に、デパートのレストランで修業した。「パラパラでなければチャーハンではない」と当時の料理長にたたきこまれた。

油控えめ、米を直火に当てて…。店主の柚木慎也さんの鍋から絶品チャーハンが生まれる
油控えめ、米を直火に当てて…。店主の柚木慎也さんの鍋から絶品チャーハンが生まれる

「チャーハンだけで、お客さんが笑顔になるのはうれしいですね」

ラーメンや餃子も人気のメニューだ。平日は近所のサラリーマン、休日は家族連れと、地域に親しまれている。

「町中華」は、たしかに中華料理を出す。それでも本場中国の料理とはどこか違い、日本人好みになっている。カツ丼やカレーライスなど、バラエティーに富んだメニューが並ぶ店もある。味はもちろん、飾らない気軽さや、ボリュームも魅力だ。

そんな町中華は数年前から「再発見」され、ブームとなっている。町中華をテーマにした本や雑誌などが販売され、街の垣根を越えて人が集まるようになった。慶修も町中華専門誌などで紹介され、遠くから訪れる客もいるという。

町中華をテーマにしたテレビ番組もある。BS―TBSは平成31年4月から「町中華で飲(や)ろうぜ」を放送。出演者が町中華の名店を訪れ、お酒を飲みながら中華料理を食べる。これまでに350店舗ほどを回ったという。

その魅力は、家庭にも進出している。

エスビー食品は令和2年2月、合わせ調味料シリーズ「町中華」を発売した。「ニラ玉の素」や「あんかけ野菜炒めの素」など、これまでに出したのは15商品。新型コロナウイルス禍で外食の機会が減る中で、家庭でも手軽に古き良き、昭和感も漂うような店の味が再現できる。(橘川玲奈)

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