野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志

みんなを公平に競わせる

楽天でのラストゲームを終え、チームメートに胴上げされる山崎武司。2007年に本塁打王と打点王に輝くなど活躍した=2011年10月、仙台市
楽天でのラストゲームを終え、チームメートに胴上げされる山崎武司。2007年に本塁打王と打点王に輝くなど活躍した=2011年10月、仙台市

プロ野球の春季キャンプは終盤を迎えた。どの球団でもマイペースの調整が許されている選手は一部の一流選手だけ。多くの選手にとっては、この時期にどれだけアピールできるかが今季の成否を左右する。チームが優勝しても、出場機会を得られなければシーズン後に戦力外になるシビアな世界。今が最も大切な時期といっても過言ではない。

各球団の監督は、選手それぞれの気持ちをいかに前に向かせてチームを活気づけられるかが腕の見せどころとなる。

楽天の監督を務めた2005年。キャンプインにあたって、僕は選手たちの前でこう宣言した。「全員が同じスタートライン。キャンプとオープン戦の結果ですべてを見極めて開幕1、2軍のメンバーを振り分ける」。レギュラーと控え選手、若手とベテラン。さまざまな立場の選手を奮い立たせようと言葉で伝えた。

僕の言葉は狙い通り、ベテラン選手の心に届いた。36歳で復活を懸けてオリックスから移籍してきた山崎武司。07年に本塁打王、打点王の2冠王になるなど楽天でもうひと花を咲かせたが、引退後に「田尾さんがあのとき、年齢ではなく結果で判断すると言ってくれたのはうれしかった」と話したという。

選手を色眼鏡でみてチャンスを与えなければ腐ってしまう。全員を公平に争わせたかったから、2軍にいる選手にも1軍昇格に必要な条件を設定した。先発投手なら2軍戦でクオリティースタート(6回以上を投げて自責点3点以内)を2試合連続、中継ぎ投手は1イニング無失点を3試合連続。達成した選手は必ず上に引き上げた。

ベテランの気持ちを乗せることの大切さは、選手生活の晩年を過ごした阪神での体験でよく分かっていた。チームが低迷する中、当時の村山実監督は「今はチームの過渡期。とにかく若手を育てないといけない」と公言。20代の若手選手を起用する方針にシフトした。考えは間違っていないが、監督が本心をそのまま口にしても、グラウンドでプレーする側からすれば反感を抱くだけだった。

今でも「ベテランと若手、同じ力だったら若手の方を使う」と言って刺激を与えたつもりになっている監督がいる。僕は適切なやり方だとは思わない。全盛期を過ぎたと思われる選手でもうまく活用できれば戦力となる。それができたチームが最後に勝つはずだ。(野球評論家)

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