酒の蔵探訪

福源酒造(長野県池田町) 日本酒ビンテージに挑む

福源酒造の本社=長野県池田町(同社提供)
福源酒造の本社=長野県池田町(同社提供)

看板商品の一つ「純米吟醸 無濾過(ろか)原酒・生貯」を口に含む。新鮮な果実のようないわゆる吟醸香がするが、度数は16度と少し高く、熟成によるコクも強めだ。ブルーチーズや魚の肝も、ちゃんと引き立てた。

北アルプスの大天井(おてんしょう)岳や燕(つばくろ)岳を望む長野県池田町の福源(ふくげん)酒造は、伏流水を仕込み水に250年以上の歴史を持つ。現社長は17代蔵元の平林淳男さん(96)だが、平成6年から娘で18代の聖子さんが経営に参加。「万人受けしなくていい。10人中2人が支持してくれればいい」。ファッション界に身を置き、イタリアなど海外生活が長い聖子さんは、伝統や常識にとらわれず、世界を意識した挑戦を続けている。

一般に日本酒は、秋に収穫した酒米を冬に仕込み、翌年いっぱいで売り切る。これに対して、ワインやウイスキーは年月をかけて熟成させ、味や香りのバランスを整え、深みを増すことが重宝される。

帰国した聖子さんは、消費者が製造年月日の新しい酒を選んで買うのを見て「牛乳じゃないんだから」と、日本酒を濾過せず、熟成させ始めた。透明ですっきりがいいとされた時代。杜氏(とうじ)も最初は反対したが、720ミリリットル瓶で販売を始めると、冷蔵するにもサイズがよく評判になった。「純米大吟醸 無濾過原酒・生貯」(720ミリリットル、3630円)など、無濾過・熟成シリーズの誕生だ。

マネジャーの宮沢一生さん(71)に「チーズのようなこってりした肴(さかな)が合う」などと言われ、つまみを選ぶ楽しみはワインのようだった。

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