ローカル線維持への協議に国の関与を 九州の鉄道会社

被災した日田彦山線の彦山駅周辺で進むBRT転換への工事=福岡県添田町
被災した日田彦山線の彦山駅周辺で進むBRT転換への工事=福岡県添田町

全国的な課題となっている鉄道の赤字路線の維持をめぐり、国土交通省が交通網の再構築を検討する有識者会議を立ち上げた。九州でもJR九州が赤字の線区を公表し、自治体と路線維持に向けた協議を進めている。経営環境が悪化する公共交通の維持にはバス転換を含めた検討が不可欠だが、鉄道の廃線は沿線自治体や住民の抵抗感が強い。円滑な協議に向け、九州の鉄道会社からは財政支援を含めた国の関与を求める声が上がる。

「地方ローカル線をどう公共交通機関として維持していくかを、自治体や利用者と一緒に考えるいいチャンス。本音の議論ができるといいと思う」

JR九州の青柳俊彦社長は22日の記者会見で、有識者会議に関し、こう言及した。

JR九州は、令和2年度に乗客が少なかった線区別の収支のうち、対象となった19線区全てで営業損益が赤字となった。平成29年の九州北部豪雨で被災し、不通となった日田彦山線添田(福岡県添田町)―夜明(大分県日田市)は、沿線自治体との協議の結果、バス高速輸送システム(BRT)への転換が決まった。しかし鉄道復旧を求める自治体との間で協議は難航し、方針決定までに被災から3年を要した。

国交省の有識者会議によって今後、全国的に路線のあり方を見直す議論が進むとみられる。日田彦山線のBRT転換が住民の利便性向上につながるかは議論の試金石になると予想され、青柳氏は「サービスが向上するシステムにして、将来の交通網の手本となるようにしたい」と語った。

一方、こうした動きについて、西日本鉄道の林田浩一社長も17日の記者会見で「効率化を進め、どうしても鉄道として維持できないなら、コストの安いモード(交通手段)を模索するのは当たり前の流れだ。やっとここまできたという思いだ」と述べた。

西鉄は路線別の収支を公表していないが、福岡県内の天神大牟田線は平成4年をピークに乗客の減少が続く。林田氏は、自治体が資産を保有して民間事業者が運営する「上下分離」などの議論には国の関与が不可欠との認識を示し、「自治体も国からの財政支援などの整備がないと動きようがない。支援のスキームを考えてもらうと、コミュニケーションもうまくいき始める」と述べた。

国交省の検討会は14日に初会合が開かれた。鉄道の利用促進や公有民営化、バスへの転換といった存続の具体策を議論し、今夏をめどに方針をまとめる。(一居真由子)

JR九州は22日、佐賀と長崎を結ぶ西九州新幹線の開業日を9月23日とすると正式に発表した。秋の観光シーズンの始まりに合わせて開業し、観光客を呼び込む。8年ぶりに社長を交代する人事を固めたとの報道に関しては、青柳俊彦社長は「当社としては白紙の状態」とコメントした。

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