必要な法改正、税収減…課題山積み トリガー条項

衆院予算委で答弁する岸田文雄首相=21日午前、国会・衆院第1委員室(矢島康弘撮影)
衆院予算委で答弁する岸田文雄首相=21日午前、国会・衆院第1委員室(矢島康弘撮影)

原油価格高騰への対策で岸田文雄首相は21日、ガソリンの平均小売価格が一定の水準を連続で超えた場合にガソリン税の上乗せ分の課税を停止してその分を減税する「トリガー条項」の凍結解除も検討対象に含める考えを示した。ただ、実現には法改正が必要となるため一定の時間がかかるほか、国・地方の税収減、給油所など流通現場の混乱が懸念されており、取り組むべき課題は少なくない。

発動可能にする上では、トリガー条項の凍結を盛り込んだ震災特例法の改正がまず必要だ。国会での審議を経なければならず、一定の時間がかかる。原油価格は変動が激しい上、足元で大きな影響を及ぼしているウクライナ情勢は予断を許さない状況にある。法改正を待っていては機動的に対応できない恐れもある。

国・地方の税収への影響も大きい。鈴木俊一財務相は今月14日の衆院予算委員会で、仮にトリガー条項の発動が1年間続いた場合、国で1兆円程度、地方で5千億円程度、合計では1兆5700億円程度の減収が見込まれると説明。税収減に直面する地方との話し合いも必要となってくる。

消費者に身近な給油所など流通現場が混乱するとの声も根強い。発動されればガソリンの小売価格が1リットル当たり25・1円下がることから、40リットル給油すれば1千円程度安くなる計算だ。ガソリン税の上乗せ分を減税する前には値下がりを見越した買い控えが、逆に税率を元に戻すタイミングでは安いうちに給油しようとする駆け込み需要が、それぞれ生じるとの可能性が高い。

石油連盟の杉森務会長は今月17日の記者会見で、トリガー条項の凍結解除について「店頭での(需要変動の)さばきや物流が円滑にできるのか。安定供給に支障をきたすのではないか」と述べ、慎重姿勢を示した。

また、トリガー条項が対象とする燃料はガソリンと軽油のみで、北海道などの寒冷地で冬場に需要が膨らむ灯油や、農業・銭湯・クリーニングなどの業界で燃料として使う重油は含まれていない。これに対し、政府が燃料価格の急騰抑制のために1月27日から発動した石油元売り業者に補助金を支給する支援策は灯油や重油も対象に入れている。(森田晶宏)

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