栃木県芳賀町在住の陶芸家、林香君(はやしかく)さんが、今春の稼働を目指し同県壬生町に廃棄物の焼却熱を利用した窯を整備している。障害や年齢に関わらず芸術活動を楽しんでもらおうと、これまで約20年、小学校や養護施設などで子供たちとの作品制作を手がけてきた林さん。「エネルギーのリサイクルによって、新しいものを生み出すことを子供たちに伝えたい」。また一つ、芸術の持続可能性を高める新たなチャレンジへと踏み出した。
産廃の焼却熱を活用
林さんが新たなチャレンジとして始めたのは、地球環境へも配慮することで、芸術を持続可能な活動にしようとの取り組みだ。
産業廃棄物を処理する焼却プラント製造の「アクトリー」(石川県)が平成26年に実証実験施設として開設した壬生町の「R&Dセンター」の協力で、建設中の新施設内に、林さん専用の窯を整備。同センターでは焼却炉から得られるエネルギーの有効利用や技術開発を行っており、陶芸用の窯も産業廃棄物などを処理した焼却熱から電気に変えて供給する。
専用窯は今春、稼働予定で、新施設では制作スペースも設けるなど、プロジェクトの拠点づくりを目指す。林さんは制作過程も含めた陶芸を通じ「地球を大切にするエネルギーのリサイクルについて理解してほしい」とメッセージを送りたい考えだ。
「芸術の力」実感
陶芸の未来を見つめる林さん。その底流には、約20年にわたって続けてきた障害者や子供たちなどとの交流がある。
林さんは自身の創作活動に加え、平成12年から視覚・聴覚障害を持つ子供たちと陶芸による交流を続けてきた。21年からは小学校や児童養護施設などで、子供たちが集団で一つの大きな作品を作る「壁画プロジェクト」を展開。これまで70作品以上が誕生し、自治医科大とちぎ子ども医療センターなどに展示されている。