アスリート、人権問題に沈黙 中国の言論統制警戒

4日に行われた北京冬期五輪の開会式では、ウイグル族の選手(左)らが聖火リレーの最終走者を務めた(AP)
4日に行われた北京冬期五輪の開会式では、ウイグル族の選手(左)らが聖火リレーの最終走者を務めた(AP)

北京冬季五輪では、中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区での人権弾圧などをめぐり各国選手らが政治的なメッセージを発信するかどうかが注目された。しかし、中国側が「言論統制」の方針を示していたこともあり、会場では選手の声をほぼ「沈黙」させることに成功した。一方で中国は自国の主張を五輪の場で積極的に発信し、露骨に政治利用する姿勢をみせている。

「歴然と人権侵害をしている国に五輪(の開催権)を与えるのは極めて無責任だ」。スピードスケート男子の5000メートルと1万メートルで2冠を達成したニルス・ファンデルプール(スウェーデン)は地元紙にこう語り、国際オリンピック委員会(IOC)を批判した。この発言は帰国後のもの。「中国には自国チームが残っており、多くを語るべきではない」とも述べた。

リュージュ女子1人乗りなどで金メダルを獲得したナタリー・ガイゼンベルガー(ドイツ)も、中国の人権問題について「(ドイツに)帰ればもっと言うことがあるかもしれないが、ここではしゃべらない」と記者会見で語った。

スキージャンプ男子ではトルコのファティヒアルダ・イプチオールが水色地に白い三日月と星が描かれたスキー板を使用。中国政府が新疆ウイグル自治区の安定を脅かしているとするウイグル独立派の旗に似ており、SNSでは「中国の弾圧に抗議した初のスキー選手だ」と称賛が広がった。

トルコ人はウイグル人と民族的に近い。だが、同選手は翌日、三日月などのマークを外した板に変えた。ロイター通信の取材に「答えたくない。私はスポーツ選手で、自分の仕事をするだけ」と話した。

政治的中立を標榜(ひょうぼう)するIOCは五輪憲章第50条で競技会場などでの政治的、宗教的、人種的な宣伝活動を禁止しているが、東京五輪から規制を一部緩和。選手入場時や紹介時の表現行為を認めた。ただ、大会組織委の幹部は1月、「五輪精神、特に中国の法律と規定に違反する場合は処罰を受ける」と牽制(けんせい)した。

「政治的中立」が原則の大会組織委だが、厳家蓉報道官は17日の定例会見で、新疆ウイグル自治区での強制労働に関する質問に「噓だという証拠が出ている」と主張。台湾選手団の呼称が「チャイニーズ・タイペイ」となっていることに関する質問にも、IOC側の回答を遮るように「世界に中国は一つだけだ。台湾が中国の不可分の一部であることは国際社会で認められている」と回答した。

(北京 西見由章、桑村朋)

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