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キャスター、タレント ホラン千秋 『捜査線上の夕映え』今を映し出すミステリー

『捜査線上の夕映え』有栖川有栖著(文芸春秋・1980円)
『捜査線上の夕映え』有栖川有栖著(文芸春秋・1980円)

『捜査線上の夕映え』有栖川有栖著(文芸春秋・1980円)

ミステリー小説、なかでもコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズが好きだ。謎解きの妙味はもちろんだが、名探偵ホームズとその友人である伝記作家のワトソンによるユーモアあふれる掛け合いが楽しいからだ。

有栖川有栖(ありすがわ・ありす)さんの「火村シリーズ」を読んだのは本書が初めてだったが、同じように主役2人のテンポの良い会話にまずひき込まれた。京阪神の警察に協力して犯罪捜査にもあたる臨床犯罪学者の火村英生と、彼の大学時代からの友人である作家の「私(=有栖川有栖)」。この名コンビが交わす会話がいい味を出している。

大阪のとあるマンションの一室で、スーツケースに詰め込まれた遺体が発見されたことから物語は動き出す。被害者は1人暮らしの元ホストの男で、どうやら鈍器で殴り殺されたらしい。マンションの監視カメラの映像や、男の金銭問題、異性関係のトラブルなどから複数の容疑者が浮上するものの決め手がなく、捜査は難航。今回も警察に協力することになった火村は、有栖に対し「俺が名探偵の役目を果たせるかどうか、今回は怪しい」と漏らす。ありふれたように見えた事件の意外な輪郭が次第に立ち上がってくる。

癖のある登場人物の複雑な心情が絶妙に表現されていてうならされるし、題名にある夕景の描写も美しくて余韻が残る。冒頭から注意深く読んだけれど、結局、自分が全く考えもしなかったところにミステリーを解く大事な鍵があった。この驚きもミステリーを読む醍醐味(だいごみ)! コロナ禍が警察の捜査にどんな影を落としたかも詳細に描かれる。その意味で今の社会を映し出す小説でもある。


『逆ソクラテス』伊坂幸太郎著(集英社・1540円)

『逆ソクラテス』伊坂幸太郎著(集英社・1540円)
『逆ソクラテス』伊坂幸太郎著(集英社・1540円)


子供を主役にした5つの小説が収録されている。大人に一泡吹かせようとする子供たちの言葉が胸に刺さる。自分は何でも分かったつもりになって、人に正しさを押しつけてはいないだろうか? 大事なことをごまかして小手先で何でも済ませようとしていないだろうか? 読みながら、大人としての自分の振る舞いを振り返った。

<ほらん・ちあき>昭和63年、東京都生まれ。青山学院大学英米文学科卒。TBS系報道番組「Nスタ」、NHK総合「SONGS OF TOKYO」などに出演中。

ホラン千秋さん
ホラン千秋さん

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