Spotifyで“炎上”した「反ワクチン」のポッドキャストを、実際に聴いて見えてきたこと

無視されていたグラフの存在

しかし、ここで注意すべき点がある。博識なローガンだが、ニュースを何気なく見ている人なら誰でもよく知っている2種類のグラフについて、一度も触れていなかったのだ。それは誰でも必ず目にしたことがあるグラフである。

ひとつは新型コロナウイルス感染症による入院者数で、もうひとつは死亡者数を示したものだ。いずれのグラフもワクチン接種済の人を表す線が、基準値であるゼロの少し上をケーキの上のアイシングのように安定して推移している。もうひとつの線はワクチン未接種者のものであり、そちらは大きな山のようになっている。

これらの数字を見ると、地域や時期にもよるが、ワクチン未接種の人が入院したり死亡したりする確率は何倍も何十倍も高いことがわかる。それは噂や逸話でも、裏付けのない論文やニュースレターでの証言でもない。それは真実であり、棺の数を見てもそれは明らかだ。ワクチン接種を思いとどまっている人たちは、誰もがこれらのグラフと向き合うべきだろう。

しかし、186分間にわたってただひたすら互いに同調し合うだけのローガンとマローンの会話をすべて聴いても、国内の病院が感染者で溢れ返っていることや、彼らのインタビューがあった日に世界中で7,559人が新型コロナウイルス感染症により死亡し、米国ではうち1,410人が死亡した事実などは一切語られていない。そうした死亡者の大半はワクチン未接種者だったのである。代わりに「ワクチンがあなたやあなたの子どもを殺すかもしれない」という主張を延々と語り合っている。

ちなみにマローンは、病院がより多額の政府資金を得るために、人が銃で撃たれて死んだ場合でさえ死因が新型コロナウイルス感染症だと嘘の報告することが常態化していると主張している。しかし、その主張は誤りであることはすでに証明されている。

だからこそ、あの堅物のニール・ヤングは立ち上がったのだ。そしてそのことによって、Spotifyとジョー・ローガンは危機的な状況に陥ることになった。

エクが受ける報い

今回の騒動ではっきりしたことがある。個人的には、ジョー・ローガンが自身のポッドキャストに好きな人を出演させ、思うがままにインタビューできるような自由な社会を望んでいる。しかし、その結果として、責任感のある出版社が彼との関係を断ちたいと考えたり、数億ドル(数百億円)規模の報酬を彼に支払いたくない考えたりしたとしても、彼はそれを甘んじて受け入れるべきだろう(現時点ではSpotifyはローガンにとって強力な資金源であり続けている)。

ロバート・マローンもまた、ローガンやタッカー・カールソンの番組、自身のSubstackアカウントなどのメディアを通じて、何百万人もの人々に自分の主張を伝える自由をもつべきだ。しかし、それと同時にTwitterの場合のように、プラットフォームの誤情報に関する方針に違反すれば、利用を拒否される可能性があることも覚悟しなければならない。

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