Spotifyで“炎上”した「反ワクチン」のポッドキャストを、実際に聴いて見えてきたこと

問題のポッドキャストを聴いてみた

今回の騒動の背景には、プラットフォーム間の駆け引き、言論の自由、インターネット経済などの問題が複雑に絡み合っている。だが、こうした“講釈”を垂れる前に、問題となっている大元のポッドキャストを実際に聴いてみようと考えた。

ところが、これは耳が疲れる大仕事となった。ローガンがmRNAワクチンに批判的なロバート・マローンをゲストに迎えた3時間ものインタビューを収録した「エピソード1757」を、すべて聴く必要があったからだ。問題のインタビューの前後には、大手製薬会社の問題を扱った書籍の著者とコメディアンのキャロット・トップが登場する。

わたしがローガンのポッドキャスト「The Joe Rogan Experience」を聴くのは今回が初めてではない。イーロン・マスクのインタビューをはじめ、ほかにも数人のインタビューを聴いたことがある。

ローガンの流れるような話し振りや、ゲストから率直な意見を引き出す話術を常々好ましく感じてきたが、新型コロナウイルスの脅威を軽んじるような言い回しには閉口することもあった。しかし、ロバート・マローンのエピソードは、これまでとは次元が違うものだった。

ローガンが動画のなかで語っているように、マローンはmRNAワクチンの技術開発に携わっていた。しかしそれ以降、彼はmRNAワクチンの普及を厳しく批判する側に回り、大規模な隠蔽工作によって有害な副作用についての情報が封じ込められたと非難している。マローンの具体的な主張の多くは否定されており、専門家たちは彼が誤情報の発信源であると結論づけている。

ふたりがポッドキャストを収録した12月30日の時点で、マローンはワクチンに関する誤情報を流したとしてTwitterから追放されたばかりだった。マローンは医学者であり、その主張のなかには表面的には理にかなっているものもある。しかし、その他の大部分の主張については、十分に裏付けのなされた研究とは矛盾したものだった。

問題のポッドキャストでローガンは十分すぎる時間を割き、マローンに自説を存分に展開する機会を与えた。そこでマローンは、ワクチンは危険であり、不必要な場合も多いと警鐘を鳴らした。そして自らの主張を抑圧しようとする動きは、社会全体の自由に対する脅威であるとも警告している。

“陰謀論”を垂れ流していたマローン

こうしたマローンの主張は、より壮大な物語の一部をなすものだ。何らかの世界規模の陰謀を企む邪悪な力が働いている、という物語である。陰謀には製薬会社のほか、製薬会社と手を結んだ報道機関、ジョー・バイデン、そしてお決まりのアンソニー・ファウチも関与している、というわけだ。

「この件に関して連邦政府は暴走しており、完全に法を無視しています」と、マローンはローガンから特に反論されることもなく語っている。「政府は生命倫理を完全に無視しています。被験者を保護する連邦の『コモン・ルール』を完全に無視しています。わたしが長年にわたり教え込まれてきたあらゆる規則を、政府は破っているのです。実験的なワクチンを義務づけることは、明らかに違法です……政府は違法行為を推進し、それを気にもとめていません。わたしたちは、うまくいけばその害が子どもたちに及ぶ前に政府の暴走を止められないかと願っています」

ポッドキャスト全体を見渡しても、ローガンがマローンの味方であることは明らかだろう。マローンは「悲惨なワクチンの副作用」や「政治家や製薬会社が糸を引く世界的な陰謀」についての怪しげな疑惑を口にする。するとローガンは、それに相槌を打ったり、驚きを示したりする。

ローガンが反論する場面があったとしても、その内容はごく生やさしいものだ。「どうしてそれが可能なのでしょう?」といった質問をローガンが口にし、それに触発されたマローンが、さらに陰謀論の深みという「ウサギの巣穴」の奥へと進んでいく(ローガンは議論のなかでこの言葉を12回も肯定的に使っている)。

マローンが質問に答えると、ローガンはさらに驚きの声をあげる。マローンはしばしば出所が不明の研究を引用して自身の主張を裏付けていた。またあるときには、ニュースレター配信サービス「Substack」の投稿を引き合いに出していた。

「ジョー・バイデンが偽ワクチンを接種した」といった類の告発は、特に疑問に付されないまま聞き流された。ローガンはときにワクチン反対派の主張を自ら持ち出ししていた。彼がワクチンの接種や義務化に反対する人々の主張によく親しんでいることは明白だった。

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